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2006年07月20日

物価決定メカニズムの変化と金融政策へのインプリケーション ~CPI安定化とそこに潜む新たなリスク~

レポートの要旨
1. デフレからの脱却がほぼ達成されるなか、日銀は7月14日に「ゼロ金利政策」を解除。今後の金融政策の焦点は、いかなるペースで政策金利を引き上げていくかに移るが、その際の注目点の一つは物価上昇テンポ。
2. 物価決定要素の代表的なものとしては、①マネーサプライ、②需給ギャップ、③為替相場、④輸入浸透度、⑤労働コスト―が指摘可能。需給ギャップが無視できない影響を及ぼしているが、近年では労働コストが最も重要な要素となっている。マネーサプライについては、むしろ「物価→マネーサプライ」という“逆”の関係が観測される。
3. 需給ギャップの物価に対する影響力はあるとはいえ、その度合いが相対的に低下してきた背景には、経済のグローバル化。すなわち、経済活動のグローバル化に伴って輸入量のスムーズな調整を通じて国内供給力のボトルネックが緩和される傾向が強まっているため。
  このことは、輸入品と国産商品の競合激化を通じて、海外の労働コストが国内の労働コストに影響を与えるようになっており、賃金体系・物価体系ともにグローバル水準に収斂する方向に圧力がかかるようになってきたことを意味。結果として、労働コストの物価への影響度が高まることに。
4. 今後の物価上昇テンポを占うために、単位労働コスト(名目賃金/労働生産性)の構成要素である①名目賃金、および、②労働生産性、に分けて今後の動向を展望。結論としては、賃金の上昇テンポが緩やかにとどまる一方、労働生産性の向上スピードは維持できると考えられることから、労働コストの上昇テンポは引き続きマイルドに。この結果、CPIベースの物価上昇のスピードも総じて緩やかにとどまると予想される。
5. 以上のように、構造的なCPI安定化が予想される状況にあるが、ここにきて注目されるのは原油・資源価格の高騰が続くなか、原材料コスト高がCPI上昇へと波及していく可能性。もっとも、これまでのところ素原材料価格上昇の消費財価格への累積転嫁率は低下傾向にあり、総じてみれば消費財価格は安定。この背景には、①企業が原油・資源価格高による交易条件悪化を、価格転嫁よりも人件費の削減・抑制で吸収する一方、②原油・資源価格高の背景にある世界経済の拡大が企業売上高の増加に作用することで、「景気循環的な生産性向上→単位労働コストの抑制」というルートを通じ、CPI安定化に寄与しているという構図。
6. このように今後ともCPIの安定化が予想されるものの、金利水準の適正化が大幅に遅れた場合、①資産バブルや②設備効率低下など、様々な形で資源配分の歪みが生じ、結果として経済変動を大きくするリスク。端的には、CPIの金融政策の判断指標としての有効性が低下している可能性が指摘でき、その意味で、持続的な景気回復が予想される限り、CPIの安定如何にかかわらず金利水準の適正化を着実に進めていくことが肝要。
7. ただし、その一方で、プラクティカルには、財政健全化が最重要政策課題の一つとなるなか、それが要請する歳出削減・増税はデフレ圧力となるだけに、金融政策のあり方もこの面への配慮は欠かせない。そこで、財政健全化との関わりを考慮しながら政策金利正常化を具体的にどういったテンポで行うかについては、以下の2段階に分けて考えることが適当。
【第1段階(2006~07年度が目処)】…現状、資産価格の高騰が限定的であり、投資効率も維持されている状況下では、政策金利の引き上げを急ぐ必要はない。当面は歳出削減スタンスを加速させるべきであり、財政健全化を配慮しつつテイラー・ルールの理論値に沿った緩やかなテンポで(2007年度末1%が目処)。
【第2段階(2008年度中を目処)】…財政削減の強化により、プライマリーバランス均衡化の展望が立てば、景気が回復基調にある限りは、CPIの動向如何にかかわらず「適正化水準(中立水準)」(=潜在成長率+望ましいインフレ率=2%台半ば)までの引き上げを速やかに実施。
 

レポート目次
  1.物価決定要因①「マネーサプライ→物価」のルートは観測されず
2.物価決定要因②「労働コスト」が物価変動の最重要ファクター
3.物価決定要因③物価決定メカニズムの背景に経済グローバル化
4.物価上昇のテンポ①賃金上昇テンポは緩やか
5.物価上昇のテンポ②持続する生産性の向上
6.物価上昇のテンポ③原油・資源高下のCPI安定化の構図
7.リスク:物価安定化の背後に潜むリスク
8.提言:政策金利正常化に向けた2段階アプローチ

  (レポート全体はPDFでご覧いただけます。)
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