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2006年05月31日

見直すべき給付削減型財政改革 ~わが国の社会政策支出は先進国最小~

要旨
(イ)

   財政健全化論議が本格化。深刻な歳入欠陥の是正には歳出削減だけでは困難であり歳入増加が不可避とされるなか、公的負担増大の上限が焦点に。
   しかし、現下の論議には問題。まず議論が矮小化。高負担高福祉から低負担低福祉、あるいは大きな政府から小さな政府まで、多様な組み合わせがあるなか、現下の争点は①負担増と給付現状維持、②負担一部増加と給付一部削減、③負担現状維持と給付削減、の選択肢に限定。加えて、歳出削減と給付カットの連動を前提とした議論も問題。

(ロ)

   主要先進各国間で政府全体の総収入と総支出の規模を比べると、わが国は公的負担の規模は各国中最小で、歳入不足規模は各国中最大(図表1)。そのため、わが国国民は他の国々を上回る経済的余裕を享受しても当然。
   しかし、一世帯当たりの年間消費支出を日米独3カ国で対比すると、逆にわが国国民が享受する経済的余裕は他の国々を下回る可能性(図表2)。必需的色彩が強い教育費や食料費支出が重い一方、生活の豊かさを表す代表的支出であり、消費金額が最も大きい住居関連支出はわが国が最小。加えて、居住環境は3カ国中最低(図表3、4)。
   こうした認識に立脚すれば、とりわけ個人セクターにおいて公的負担を現状比拡大させる余地は限定的。大幅な負担の増加は深刻な生活水準の切り下げに繋がる懸念大。

(ハ)

   わが国の公的負担が先進各国中最小で、歳入不足規模は各国中最大という事実と、国民が享受する経済的余裕が他の国々を下回り、公的負担追加の余地は限定的という認識には一見矛盾。この矛盾を解く鍵として、教育費負担が格好の材料。公的負担が軽くても、その分、必需的支出が増えれば家計が享受する経済的余裕は増えず、一方、公的負担が重くても、その分、政府の国民に対する給付が増えて必需的支出が削減されると家計が享受する経済的余裕は減らないため。むしろ、所得分配やセーフティ・ネット機能が強化され、国民が安心して生活できたり新産業創出へのチャレンジが広がり、経済活力が高まるのであれば、高負担高給付路線は有力策。端的な事例が、就労促進策や高等教育も含めた教育支援などによる近年のフランスや北欧諸国での少子化対策の成果。
   こうした観点から、各国と社会政策・教育支出を対比すると、医療・健康支出がほぼ同様である以外、いずれもわが国はアメリカと並び最小であり、小さな政府(図表5)。しかし、国民への給付以外では主要先進各国を上回る大きな政府(図表6)。90年代、大半の国が国民への給付を増やしつつ、それ以外の政府活動について改革実施(図表7)。わが国では、国民への給付以外の歳出削減によって公的負担増を回避する余地(図表8)。

(ニ)    このようにみると、財政健全化に向けてわが国が第一に着手すべきは、国民に対する給付の削減ではなく、その他支出に関する抜本的削減の断行。そうした改革によって、大きな政府路線からの決別ならびに負担と給付の連動に国民の信認を確保したうえで、目指すべき負担と給付の新たな枠組みに関する国民的コンセンサスの形成を図るべき。
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