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海外面的開発における公的支援・関与への期待(1)

2017年12月12日 中村恭一郎


 前回に引き続き舞台は海外新興国となりますが、近年、東南アジア諸国で活発になってきた「面的開発」をテーマに、日本企業の参画、それを後押しする公的支援・関与への期待を、今回は取り上げます。

 面的開発とは、点(例:駅開発、個々の不動産開発)の開発や線(例:鉄道とその沿線開発)の開発が複合し、一定の面的な広がり(地理的な広がり)を指向しながら推進される回廊・都市・地域・エリア開発などを指す概念です。近年では、スマートシティー(スマートコミュニティー)やTOD(Transit Oriented Development=公共交通利用を核とする都市・沿線開発)、大規模複合開発(住宅、商業施設等の一体開発等)などの例があります。

 東南アジアでは、一定の経済的発展を遂げたタイやマレーシア、それを追走するインドネシアなどにおいて、単純な宅地開発や工業団地開発ではなくスマートシティー開発を、あるいは公共交通網の整備・再編をきっかけにTOD開発を指向するといった動きが、よく見られるようになりました。

 面的開発は、計画段階から開発完了まで中・長期的に取り組んでいくことが前提となるものです。10年近い期間をかけて、公共交通網の整備と連動しながら開発が進む事業もあります。また、緻密な計画はあっても、土地収用を進め、地盤を改良し、基礎的なインフラを整備する間に、数年が経過してしまうこともしばしばあります。現地政府(国、自治体)と現地民間企業が連携して推進される事業も多く、それぞれのニーズや思惑も複雑です。そのため、一海外企業が単独で参画すること、あるいは参画したとして中心的な役割を果たしていくには常に難しさが伴います。

 こうした背景から、官民が連携し、官による公的支援・関与を常に得ながら、複数の民間企業が協力して開発参入を図るという方法が有効になります。では、どのような公的支援・関与が期待されているでしょうか。残念ながら、この点については未だ実事例に基づく蓄積が十分ではないのが現状です。

 日本総研は、2010年前後から、主にスマートシティー開発を題材として東南アジアや中国での面的開発に取り組み、日本企業の開発参画を支援してきました。私自身も日本と開発現地を行き来しながら複数のプロジェクトに携わって来ましたが、この経験の中で、面的開発において期待される公的支援・関与は次の3つであると考えています。

(1) 現地情報収集における公的支援・関与
(2) 現地との合意形成における公的支援・関与
(3) 開発予算の確保における公的支援・関与

 いずれも、民間企業の力だけでは実現や問題解決が難しいと感じる課題です。

 例えば、「(1)現地情報収集」とは、「一体誰が実権を持って面的開発を推進しているのか、意思決定者は誰なのか」、「開発の裏づけとなる政策や施策は何か」、「現地でどこまで検討が進んでおり、資料はどのようなものがあるのか」といった一見基本的な情報を収集することですが、ここからして困難を伴うのが海外面的開発の特徴です。

 限られた期間の中で成果を挙げることが求められる民間企業にとっては、開発参画の入り口にあたる現地情報収集は、可能な限り効率的、効果的に進めることが必須となります。ここでつまずけば、具体的に開発内容の検討に入る前に時間切れとなり、撤退を余儀なくされることもあり得ます。

 次回から、上述の3つの項目について、それぞれの課題と公的支援・関与への期待を整理していきます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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