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2006年01月19日

シティ・マネジャー制の導入を ~三位一体改革の推進力強化に向けて~

要旨
イ. 政府と地方六団体は2005年12月3兆円の税源移譲と4兆円規模の国庫負担金削減に合意し、三位一体改革が漸く決着。もっとも、国から地方への権限と財源の移譲、地方の活性化促進、それらによる厳しい財政状況の打開が三位一体改革の主眼。こうした観点からみると、三位一体改革は未だ道遠しといわざるを得ない状況。
ロ. 市町村合併やPFI制度、指定管理者制度など、すでにわが国でも様々な取り組みが始動。もっとも、地域経済の活性化や地方財政の建て直しという点に着目すると、少なくともこれまでの推移をみる限り、大きな効果が上がるまでには至らず。そこで、改めて諸外国の取り組みをみると、アメリカでは、公的サービスのアウト・ソーシングや民営化など、ダウン・サイジングに向けた様々な取り組みにとどまらず、地方自治体のあり方を根本的に見直す動きが90年代に入って本格化。いわゆるシティ・マネジャー制度の導入拡大。以下、本制度の概要を整理し、わが国導入の可能性を検討
ハ. まずアメリカの地方自治体の態様を大別すると次の通り。
  • 市長・議会型……わが国と相似。もっとも、権力集中を回避するため、市長の権限を極力制限する傾向が建国以来支配的。行政ニーズの増大を受けて19世紀後半に入り、市長の権限を強化する動きが台頭。そこで、従来型を弱市長・議会とし、新登場型を強市長・議会とする区分も。もっとも、議会と首長との政治的対立などの場合、早くても次回選挙まで事態の打開が困難という非効率性から、幅広い支持を得られず。
  • 理事会型…………理事会が立法機能を果たすと同時に、理事が行政各局の長に就任し、直接、行政サービスの拡充を図るスキーム。20世紀初頭、増大する行政ニーズへの対応策として注目。もっとも、専門的な知識やスキル不足から、導入の動きは下火に。
  • 議会・支配人型…議会から業務を委任された支配人が専門家として行政運営。市長・議会型や理事会型への反省から導入の動きが拡大。今日、米国以外の先進国でも採用。
  • タウン・ミーティング型……全員参加の原則のもと、住民が議論し決定を下す典型的な直接民主政スキーム。物理的制約が大きいため、今日では少数派。
二. 次いで近年の推移をみると、市長・議会型から議会・支配人型への移行が本格化。主因は、1.自治体財政の困窮、2.行政サービスに対する需要増大、3.戦略的経営の必要性増大、の3点。財政制約が強まり、ダウン・サイジングや生産性の向上が求められるなか、行政ニーズの拡大や多様化に対応するには、アウト・ソーシングの活用や業務体制の抜本的見直しなど、戦略的経営の推進が不可欠に。とりわけ、地域経済の停滞問題が深刻化するなか、総合的プロジェクトの遂行能力が焦点に。
ホ. 加えて、アメリカでの導入経緯に着目してみれば、シティ・マネジャー制導入によってわが国自治体改革が大きく進む展開が期待。象徴がコントラクト・シティ。警察や水道事業など、住民サービスを自治体が自ら実施するのでなく、外部にサービスを委託するスキーム。20世紀半ば以降、シティ・マネジャー制導入に伴って拡大。さらに、アメリカの地方自治体の簡素な議会スタイルも、わが国自治体改革の推進力に。アメリカの地方自治体議会では、わが国に比べて議員数が大幅に少ないうえ、各議員は本業の傍ら非常勤として議員活動を行うケースが支配的。議員収入も低水準。なお、英仏独など欧州先進主要各国でも、自治体議員は総じて名誉職という位置づけ。
ヘ. もっとも、シティ・マネジャー制のわが国への導入は、憲法上疑義がありとの指摘。しかし、次の点を加味してみると、むしろ、導入こそ現行憲法に合致。
     
  • 現行憲法第8章の地方自治篇はマッカーサー草案で初めて盛り込まれたこと。明治21年以来のわが国地方制度の蓄積をまったく無視することはできないものの、現行憲法の地方自治篇の解釈には、むしろマッカーサー草案策定の経緯や背景がより重要。  
  • そうした観点からみると、憲法第93条は純然たる二元代表制を定めた規定という読み方は困難。憲法第93条第2項では、地方公共団体の長、議会の議員のほか、法律の定めるその他の吏員についても、住民の直接選挙を規定。  
  • マッカーサー草案作成に当たり、参照されたと思われるアメリカ地方自治の経緯からみると、憲法第93条は、純然たる二元代表制よりも、市長の権限の強化を抑制する観点から各執行機関の長を公選とした弱市長・議会の色彩が濃厚。
ト. 憲法上の疑義がないとしても、わが国では近年市町村合併によって規模の拡大が進んでいるだけに、事実上シティ・マネジャー制の採用は困難との指摘も想定。確かに、20世紀半ば、シティ・マネジャー制は大都市よりも、むしろ中規模あるいは小規模自治体で導入。しかし、近年、事態は様変わりに。すなわち、今日では、巨大都市でもシティ・マネジャー制が積極的に採用。例えば、人口上位10都市についてみると、第2位のロスアンゼルス市を筆頭に7市が支配人制を導入、市長・議会型は3市のみ。
チ. シティ・マネジャー制の導入は、新たな職位の追加が目的ではなく、それを起点に、適切な組織形態を追求し、業務スタイルを抜本的に見直すことで、厳しい財政状況を打開し、地域経済の再生を図ることが主眼。そのため、シティ・マネジャー制の導入だけでは不十分であり、とりわけ次の3点が重要。
     
  • さらなる自治体権限の拡大。必置規制など、国のガイドラインの廃止撤廃が必要。  
  • 一段の参入規制の撤廃。コントラクト・シティ成功の要諦は供給サイドでの競争原理。その結果、低価格で良質のサービスの外部購入が可能に。  
  • 非営利団体に対する支援強化。補助金給付より、NPOや住民参加の活用が得策。
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