要旨 |
(1)
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政府は国際観光を21世紀の重要産業と位置付けているものの、わが国への訪日外国人は、諸外国と比べても、出国者数と比べても、低い水準。もっとも、90年代後半以降、訪日外国人は東アジア諸国を中心に緩やかな増加傾向。さらに今後は、世界最大の人口を抱える中国からの訪日拡大が期待できる状況。そこで、本レポートでは、2025年までの中国からの訪日者数を予測したうえで、わが国経済に与える影響、政府・地方に求められる対応を分析。
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(2) |
まず、日本、韓国、台湾での経験を振り返ってみると、いずれの国においても、対外購買力(ドル建て一人当たりGDP)が拡大するにつれ、出国率が上昇するという関係が看取可能。したがって、今後の中国でも同様の傾向が現れる公算が大きく、経済発展に伴い対外購買力が向上するにつれ、中国からの出国率も上昇し、ひいては訪日者数も増加するというシナリオが展望可能。
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(3) |
中国の対外購買力が今後も拡大していくという前提のもと、中国からの訪日者数を試算すると、2004年の62万人から、2025年には617万人へと10倍に膨らむ見通し。現在の訪日者数は年614万人(2004年)であるため、中国からの増加分だけで、訪日者数が2倍近くに拡大することに。また、これに伴う経済押し上げ効果は1.5兆円に達する見込み。なお、この経済押し上げ効果は、業種別にみると宿泊、小売り、飲食、交通の4業種に、地域別にみると地方よりも大都市圏に集中する公算が大。
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(4) |
以上のように、中国人観光客に牽引されて訪日者数が急拡大する可能性が高いことを踏まえれば、政府としては、ハード・ソフト両面における外国人受け入れ態勢の整備に優先的に取り組むべき。地方としても、観光産業を拡大させていくためには、大都市とは異なるアピール点を見出して、観光地としての魅力を高めていくことが重要。
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