コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

日本総研ニュースレター 2009年6月号

動き出す中国版グリーンニューディール

2009年06月01日 王婷


各国のグリーンニューディール政策
 サブプライムローン問題に端を発した世界的な経済危機への対応策として、各国政府は環境・エネルギー分野への投資を打ち出し始めている。米国オバマ大統領は就任後まもなく、10年間で1,500億ドルのグリーンエネルギー投資によって500万人の雇用を生み出し、2050年までに温室効果ガスを1990年比で80%削減するといったグリーンニューディール政策を発表した。日本も環境大臣名で「緑の経済と社会変革」を発表し、省エネルギー製品の導入・普及および環境分野への投資の拡大によって、2020年までに環境市場は120兆円、雇用は280万人にまで成長すると試算している。
 中国では内需拡大策として、2008年11月9日、国務院常務会が10の分野における大型投資計画を発表した。電力網の整備や原子力発電所の建設などをはじめとした4兆元(約60兆円)の規模の投資となるが、そのうち2,100億元が省エネ・生態環境に振り向けられる。また、再生可能エネルギーの技術開発が行われるなど、中国版グリーンニューディールの第一弾といえる内容となっている。

動き出す中国版グリーンニューディール
 上記4兆元の投資による、内需拡大のための一時的な措置が行われる一方で、再生可能エネルギー産業を今後の経済成長の柱とするための中長期的な施策も活発に行われている。
 例えば3月に政府が発表した「太陽光発電建築の財政補助金に関する管理弁法の暫定規定」は、太陽光発電の建築分野での試験的な普及を支援する内容である。具体的には以下の3点に対して補助を行う。
 (1)都市太陽光発電建築の一体化応用(*1)や、農村および辺鄙地域の建築における太陽光発電利用等に
    定額補助金を給付する。補助額は原則的に20元/Wp(*2)
 (2)太陽光発電製品を建築物に設置する際の技術基準の制定
 (3)太陽光発電を利用した建築における重要技術の収集および普及
 また、国家発展改革委員会傘下のエネルギー研究所では、2007年の「再生可能エネルギー中長期発展計画」で定めた数値目標を見直した「再生可能エネルギー産業振興および発展計画」を発表する予定である。例えば、風力発電は2020年に3,000万kWという目標を掲げていたが、すでに2010年に達成する見込みのため、より高い目標に修正される。太陽光発電についても、180万kWに設定されていた導入目標が1,000万kWに引き上げられる見通しだ。数字の見直しと同時に補助金など支援策も充実させるなど、再生可能エネルギー産業の発展を促進させるための意欲的な政策といえるだろう。中国の専門家によると、この政策によって創出できる市場規模は2兆元(30兆円)に上るという。


急成長する中国の再生可能エネルギー市場
 2007年に公表された「再生可能エネルギー中長期発展計画」では、再生エネルギーの導入目標を、2015年にエネルギー消費量の10%、2020年には15%としている。中国の再生可能エネルギー市場も急伸しており、2005年に126万kWで世界の8位だった風力発電は、2008年末までに1,000万kWを超え、世界第5位になった。太陽電池の生産においても、サンテックが2005年の世界7位から、2006年に世界4位、2008年には世界3位にまで躍進した。また、サンテックをはじめとした太陽電池メーカー10社が相次いで海外上場を果たすという、まさに急成長産業となっている。
 今後、政府のグリーンニューディール政策の下で、再生可能エネルギー市場がさらに成長していくだろう。

(*1)太陽電池モジュールを建築物の外壁材として使い、景観や建築デザインとの調和を図るもの。
(*2)Wp(watt peak、ワットピーク)とは、太陽光発電や風力発電などの電源において、定められた標準条件の下で得られる電力を表すもの。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ