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環境配慮評価融資の現場にて

2013年04月23日 村上芽


地域金融機関の最近の動きを見ていると、さまざまなテーマについて、外部との連携を行いながら顧客との取引深耕を図ろうとする姿勢がみられる。産学連携、人材・取引マッチング、知財などの無形固定資産担保融資、事業再生、事業承継、海外進出支援など、情報と資金をセットで提供することで、「誰から借りても同じお金」ではない独自性を発揮しようとしている。

そのような取り組みの一つとして、関西アーバン銀行が「環境配慮評価型資金調達スキーム」(2012年12月21日日本総研ニュースリリース)を導入し、最初の年度が終了した。このスキームは、銀行の顧客企業の環境配慮状況を財務情報とは別に評価し、評価結果に応じた融資条件等が設定される仕組みである。 環境配慮状況の評価にあたっては、顧客企業に調査票を提出してもらい、さらに書面に加えて詳しく話をうかがう。そして、評価結果とともに、環境経営に関する現状分析、今後の課題等に関する情報を提供することで、顧客の環境経営促進を支援するという役割を担っている。このような、環境格付けともいえる仕組みを備えた融資または私募債商品を持つ金融機関は徐々に増えてき ているが、日本総研は企業の環境配慮状況の評価の立場でこれに関わっている。

「環境配慮評価型資金調達スキーム」の特徴は、顧客企業がこれまで積み重ねてきた環境配慮のための努力(おもには規制遵守コスト)をポジティブに評価したり、これから環境配慮に取り組もうとする経営姿勢を後押ししたりできることだ。前者に関して言えば、「顧客にとっての有利な融資条件、銀行にとっての融資機会の獲得」というお互いの経済的なメリットを超えて、顧客に 「これまでの苦労が一つ報われる思いがする」と言われれば、前向きな気持ちにならない銀行担当者はいないだろう。後者についても、現時点での環境配慮状況の評価結果が低くても、翌年以降の変化を楽しみに、再提案の機会をうかがうことができよう。評価時と評価結果の還元時に2度にわたり、じっくりと顧客と対話する機会があるのが関西アーバン銀行のスキームの特性でもあ る。そのため、銀行にも顧客にも手間暇のかかることは確かであるが、経済的メリットに加えて環境への貢献やモチベーション向上など、「1粒で何度でもおいしい」可能性を秘めた商品が、広く活用されるよう引き続き貢献したい。




※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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