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リオ+20と子どもの声

2012年05月30日 村上芽


2012年6月20~22日の「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」開催まで、1カ月を切った。現在、成果文書について準備会議が重ねられているところである。

20年前の1992年の地球環境サミットでは、セヴァン・スズキさんという当時12歳の子どもが、環境活動団体を代表したスピーチの中で「どうやって直すのか分からないものを、こわし続けるのはもうやめてください」と述べた。彼女のスピーチは今や伝説とさえ言われ、多くの人の心を動かし、引用され続けてきた。この20年間で、彼女の問いに対する答えはおそらくほとんど進展していないだろう。温暖化防止の国際交渉は停滞しており、生物多様性は失われ続けている。処理するのに何百年もかかる廃棄物を、出し続けている。

しかし、新たな世代も生まれて続けている。リオ+20で会議に関わる「主要グループ」の1つ※1である「子どもと青年(Children and Youth)」は、子ども世代※2が国連会議に意見を伝えるための正式な窓口ネットワーク(MGCY)である。非公式の準備会合でロビー活動を行うなど、国際交渉に子ども世代の声を反映させるための活動を行っている。

子ども世代は実際にやって来る将来の世界を生きていかないといけない世代である。現在進行形の国際交渉の影響を最も受けるステークホルダーと言って過言ではないだろう。数の上でも、日本では14歳までの子ども人口が1,665万人で国全体の13%と過去最低を記録した※3が、世界でみると70億人中18.5億人と、26%もの割合が子どもなのだ※4。持続可能性という概念の上でも、人の数の上でも、現在意思決定を行う世代は子ども世代の声にしっかりと耳を澄ます必要がある。

リオ+20での成果に向けては多くの市民セクターから危機感が表明されているが、MGCYでも同グループが支援する「未来世代のためのオンブズマン」の制度化が棚上げになるなど、交渉は容易ではない。「子ども最優先」は、国連でも国内でも、さまざまな場面で掲げられるスローガンだが、なかなか具体的な成果が現れにくい現状がもどかしい。再び心を動かす言葉が出てくることを願いつつも、それに頼っていては、おとなの責任が果たせているとは言えない。

※1 主要グループは「ビジネスと産業」「子どもと青年」「農業」「先住民族」「地方自治体」「NGO」「科学者と技術者」「女性」「労働者と組合」の9つで、1992年に採択されたアジェンダ21に定められている。
※2 国連の定義では14歳以下が子ども、15~24歳が青年である。
※3 平成24年4月1日現在。総務省統計局。
※4 国連人口部推計値、2010年。

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※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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