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平成22年度「今後の社会資本ストックの戦略的維持管理等に関する調査」結果 ~道路編~
~全国の9割以上の自治体で、今後10年以内に道路の更新・維持管理費用が財政上の課題になると認識~

2010年10月07日

各位

株式会社日本総合研究所

●全国のほとんどの自治体で道路の維持、修繕、更新費用が不足しており、10年以内に90%以上の自治体の財政的課題に
●道路の維持、修繕、更新費用の増大に対しては、経費の節減と予防保全の徹底で対応の姿勢
●約7割の自治体は、経費削減効果があれば維持管理を民間に包括委託する意向がある一方で、維持管理業務を民間委託することに対するリスク管理面での不安も

株式会社日本総合研究所(代表取締役社長:木本泰行 本社:東京都千代田区)は、今後の道路(橋梁、トンネルを含む)の戦略的維持管理等に関し、全国の市以上の地方自治体856団体の道路管理部門を対象としたアンケート調査を2010年7月~8月に実施しました。

わが国の社会資本の多くは高度成長期に整備されたため、これから一斉に更新時期を迎えます。しかし、道路をはじめとする社会資本は新規建設に関しては計画的に実施されてきた一方で、建設後については必ずしも計画的な維持管理を行ってきたとはいえません。さらに、近年は自治体の財政難により、本来は増えていかざるを得ない維持管理経費が、むしろ削減される傾向にあります。既に全国の自治体の管理する社会資本の中には、財政難のために適切な維持管理がされていない、危険な状態にあるものも多いと推測されます。

6月に閣議決定された『新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~』でも、「国・地方の財政状況の逼迫等により、社会資本ストックが更新できなくなるおそれがある」という問題意識から、社会資本ストックの戦略的維持管理等の必要性を指摘しています。さらに、「厳しい財政事情の中で、維持管理のみならず新設も効果的・効率的に進めるため、PFI、PPP の積極的な活用を図る」と踏み込んだ見解も示しています。

弊社は、今後費用が増加すると思われる道路、橋梁、トンネルの維持管理更新費用への対応策として、現在では法規制上実現が困難である、道路管理業務の民間への包括委託が有効であるとの仮説のもと、地方公共団体の道路管理部門に対するアンケート調査を実施しました。調査項目は、道路の維持管理更新に関する現状の課題、現状想定される対応策、道路維持管理の民間への包括委託に対する意向および問題点などです。

アンケート概要

調査方法: 全国の地方自治体の道路管理部門
(都道府県47団体、市786団体、東京都特別区23団体、計856団体)
調査期間: 2010年7月~8月
調査方法: 質問は郵送、回収はファクシミリもしくはE-mail
回収数: 255票(回収率29.8%)
うち都道府県22団体(46.8%)、市227団体(28.9%)、東京都特別区6団体(26.1%)

アンケート結果

9割以上の地方自治体で、10年以内に道路の維持修繕更新費用が不足する見込み

  • 道路(橋梁、トンネル含む 以下同)の維持、修繕、更新費用が、財政上の課題(予算不足、他経費の圧迫)になると考えるかを質問したところ、73%の自治体が既に財政上の課題になっていると回答しました。10年以内に財政上の課題になると考える自治体を合わせると、91%もの自治体が、今後10年以内に道路の維持管理費用が財政上の課題になると考えています。

自治体は経費削減と予防保全の徹底で対応の姿勢道路投資の比重は今後維持管理分野に

  • 今後道路の維持、修繕、更新費用が増加すると考える自治体に対し、どのような対応策を考えているかを質問したところ、最も多い回答が予防保全の徹底(57.3%)で、長期的な視点で財政負担を軽減させようという姿勢が読み取れます
  • 新規投資の抑制(50.0%)、他経費の削減(43.2%)という回答も約半数あり、短期的には経費削減で対応している現状が読み取れます。
  • これら回答から、限られた道路投資の経費が、今後ますます保守、点検、補修に移行していくことがうかがえます。

民間への維持管理業務包括委託への期待で最も多いのは経費削減
維持管理レベル向上への期待も

  • 現在の法制度上、道路の維持管理業務の民間企業に対する包括委託には制約がありますが、民間への包括委託が可能になった場合、どのような条件であれば導入を検討したいかを聞いたところ、維持管理経費の削減が最も多く回答されました(66.7%)。
  • その一方、適正な道路管理をされる道路が増える(53.6%)、維持管理レベルが向上する(49.2%)との回答も約半数に上り、既に財政難のために必要な維持管理が行えなくなっている自治体が存在することも推測できます。

民間への維持管理業務包括委託に対する不安はリスク管理

  • 民間に対する道路の維持管理業務の包括委託が実現した場合に発生する問題について聞いたところ、71.4%の自治体が事故発生時の責任問題を指摘しています。行政のチェックが行き届かないという問題を指摘した自治体も半数以上(51.2%)存在し、行政判断や行政権の行使を伴う維持管理業務を、民間に委託することに対する懸念が、道路管理の担当者に存在していることが分かります。

アンケート結果に対する弊社の考え

  • 道路の維持、修繕、更新費用にかかる費用は、既に自治体財政上の問題になっており、待ったなしの対応が求められています。
  • 自治体側も、新規投資の抑制や他経費の削減などの短期的な対応の他、予防保全の徹底で長期的な財政負担の軽減に取り組む姿勢を見せていますが、予防保全を徹底して行うためには、日常点検の強化、適切な補修方法の判断、迅速な対応などが必要となり、現在の体制だけでは困難な自治体も多いことが想定され、民間との適切な連携が必要です。
  • 現在ではさまざまな制約がある道路の維持管理業務も、民間に開放し、官民連携のもとで適切な維持管理が行われるべきであると考えます。
  • 道路管理部門の担当者が抱えるリスク管理に対する不安も、行政と民間との役割分担の明確化や、既に民間委託が進んでいる他国事例を参考にした制度設計により克服が可能であると考えます。

ご案内

本調査結果等を踏まえて、以下のシンポジウムを開催します。

(東京地区)

2010年11月11日(木)
「社会基盤イノベーションシンポジウム 次世代の社会基盤の姿~成長戦略を超えて~」(日経カンファレンスルーム)

(大阪地区)

2010年11月17日(水)
「社会基盤イノベーションシンポジウム 次世代の社会基盤の姿~関西・大阪の成長戦略実現に向けて~」(ブリーゼプラザ・小ホール)

また日本総合研究所では、地方自治体や民間事業者等と連携し、一般道路、有料道路を対象とした具体的な事業スキームの検討、官民の役割分担、道路の維持管理に必要とされる性能要件などに関する研究を今秋から開始します。

調査の概要につきましては、別添資料『平成22年度「今後の社会資本ストックの戦略的維持管理等に関する調査」~道路編~』をご参照ください。

日本総合研究所について

株式会社日本総合研究所は、三井住友フィナンシャルグループのグループIT企業であり、情報システム・コンサルティング・シンクタンクの3機能により顧客価値創造を目指す「知識エンジニアリング企業」です。システムの企画・構築、アウトソーシングサービスの提供に加え、内外経済の調査分析・政策提言等の発信、経営戦略・行政改革等のコンサルティング活動、新たな事業の創出を行うインキュベーション活動など、多岐にわたる企業活動を展開しております。

本件に関するお問い合わせ先

総合研究部門 小長井(こながい)
E-mail:rcdweb@ml.jri.co.jp
TEL:03-3288-4636 FAX:03-3288-4691

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