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2010~11年米欧経済見通し
-足許持ち直しも、先行き予断許さず-

2010年06月11日

【要 約】

1.米欧経済は足許持ち直すも、欧州の債務問題により先行きに暗雲。欧州の債務問題をきっかけに、共通通貨ユーロの構造問題が表面化したほか、かねてからの住宅バブル崩壊に伴う不良債権問題に南欧債務問題が追い討ちをかけ、ユーロは発足来最大の危機へ。

2.ただし、ユーロ崩壊によるデメリットの大きさ等を勘案すれば、ECBによる量的緩和拡大・ユーロ安などの政策総動員により、金融システム不安を封じ込め、ユーロ体制を堅持するとみるのが妥当【メインシナリオ】。

3.一方、欧州の債務問題が今後鎮静化しても、安定成長を阻害する要因が山積。米国・欧州それぞれついてみると、以下の通り。

(1)米国
(イ)景気下振れリスクの残存
年明け以降雇用が増加に転じたものの、民間雇用が伸び悩むなか、国勢調査の反動が顕在化する今秋にかけて雇用の低迷が続く見通し。月10万人を超える雇用増加が定着しない限り、景気下振れリスクは払拭されず。
(ロ)消費拡大の持続性
これまでの消費拡大は株高などを背景とした消費性向の高まりが主因。失業率の高止まりで所得の伸び悩みが予想される一方、株価や住宅価格の一段の上昇も期待し難く、消費の増勢加速は期待薄。
(ハ)景気対策効果の剥落
7,870億ドルの景気対策は、支出金額は10年1~3月期がピークで、今後支出額は減少。一方、今後予想される追加景気対策の規模は、2010~12会計年度のトータルでGDP比1%程度にとどまる見込みで、対策規模は、10年10月以降大きく減少。
(ニ)商業用不動産・住宅市場の低迷持続
商業用不動産価格は引き続き下落。商業用不動産向け貸出の不良化が中小金融機関の経営を圧迫。一方、住宅市場では、政府による住宅購入支援策打ち切りを受け販売が低迷する見込み。住宅差し押さえも依然高水準で、住宅価格への下押し圧力が残存。

(2)欧州
(イ)欧州債務問題の景気への影響
南欧諸国では、大幅な財政引き締めにより景気悪化は避けられない見通し。一方、同問題を背景としたユーロ安が域外向け輸出の増加を通じて景気押し上げに作用し、ユーロ圏全体では、景気底割れは回避される見込み。
(ロ)雇用悪化の持続
ユーロ圏では雇用の悪化に歯止めがかからず。雇用対策により雇用悪化が回避されている国でも、労働分配率上昇により人件費調整圧力が増大。所得雇用環境の悪化持続に加え、2008年来導入された景気対策の反動もあり、消費低迷が長期化する見通し。
(ハ)英国新政権の政策運営
財政赤字が先進国中最悪水準となるなか、財政赤字の大幅削減が不可避。もっとも、連立与党内での意見対立もあり、実現性は不透明。一方、2008年来打ち出された景気対策の打ち切りに伴う反動減が顕在化。足許のポンド安も景気下支え効果は限定的。

4.以上を踏まえ、各国・地域経済の見通しは以下の通り。
イ)米国:足許持ち直しているものの、所得環境の低迷持続等を背景に本格回復には至らず。むしろ、今後政策効果の反動が徐々に顕在化し、年末にかけて成長率は鈍化する公算。
ロ)欧州:ユーロ圏では、景気対策効果の剥落や財政赤字削減を進める南欧諸国の失速により、今秋にかけてマイナス成長となる見込み。もっとも、今秋以降は、ユーロ安による域外向け輸出の一段の増加が見込まれ、その後は小幅ながらプラス成長を 維持する見込み。英国でも、家計のバランスシート調整、主力産業である金融業の低迷、財政制約の強まりなどを背景に、低成長が続く見通し。

5.上記見通しに対するリスクは、欧州で金融システム不安の封じ込めに失敗するケース。その場合、ユーロ圏景気の底割れは必至。中東欧や中南米での資金制約の強まり、中国での輸出減速等を通じて、世界的に景気が再失速する恐れ【下振れシナリオ】。

本件に関するお問い合わせ先

調査部 マクロ経済研究センター 牧田
TEL : 03-3288-4244
E-mail : makita.takeshi@jri.co.jp

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