コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

会社情報

ニュースリリース

《2010~11年度見通し 》
下振れリスクが残るわが国経済

2010年06月11日

【要 約】

(1)2009年3月を底に、景気は急ピッチで回復。牽引役は製造業。もっとも、ここにきて景気の先行きに不透明感。まず、足元の輸出と鉱工業生産に増勢鈍化の兆し。また、景気回復の牽引役が内需にシフトする動きも限定的。
そもそも、これまでの高成長は自律的な回復力によって達成されたものではなく、「急減からの反動+政策効果」によって実力以上に嵩上げされたもの。内外の政策効果を捨象すれば、わが国経済は依然として低迷から脱しておらず。
経済活動水準をみても、リーマン・ショック前を大きく下回る状態。とりわけ、企業部門の落ち込みが大。欧米向け輸出の回復が遅れていることが主因。

(2)そこで、まず欧米向け輸出を展望すると、増勢は続くものの、回復ペースは緩やかにとどまる見通し。米国の家計部門の回復が遅れること、ユーロ安によりEU向け輸出環境が悪化していること、などが背景。
一方、高い伸びを続けてきた中国向け輸出も、4兆元の景気刺激策の効果が減衰するため、増勢鈍化の公算大。もっとも、中長期的な中国経済の発展余地を考えれば、中国向け輸出は息の長い拡大が期待可能。引き続きわが国経済の牽引役に。

(3)内需低迷は長期化。GDPギャップは着実に縮小しているものの、依然として26兆円の需要不足が残存。消費者物価の下落傾向が長引く見通し。
設備過剰感の解消が遅れるため、設備投資の回復力も脆弱。さらに、内外の成長率格差が広がるなか、企業は、国内投資を抑制し、海外シフトを加速させる方針を明確化。政策支援不足もこうした動きに拍車。設備投資の低迷は長期化の懸念。
雇用者所得の回復も遅れる見通し。子ども手当など家計支援策が始まるものの、可処分所得を大きく押し上げるには至らず、個人消費へのプラス影響は限定的。

(4)外需の牽引力が低下し、内需の回復力が脆弱ななか、様々な下振れリスクが顕在化。まず、資源価格の上昇によって、国内所得が資源国へ流出。最終製品価格への転嫁が困難ななか、減少した所得の大半は企業部門が負担する見込み。企業収益の下押し要因に。
加えて、景気刺激策の息切れによるマイナス影響も顕在化。具体的には、①公共投資の減少幅が拡大、②中小企業資金繰り対策による企業倒産の抑制効果が減衰、③雇用調整助成金による失業抑制効果が減衰、④自動車買い替え補助、エコポイント制度 の終了に伴い耐久消費財に反動減、などが、2010年度後半から景気を下押し。とりわけ、耐久財消費の反動減リスクは深刻。2011年後半には、耐久財消費の減少だけで実質GDPを8兆円減少させる見込み。

(5)わが国経済は、一時的な急回復局面を終え、内外需要の回復ペースに見合った巡航速度へシフトしつつある局面。2010年度は、内需に脆弱さが残るなか、輸出と耐久財消費の牽引力が低下する分だけ、成長ペースが鈍化する見通し。
2011年度は、政策効果の一巡によるマイナス影響が集中的に現れる見通し。耐久財消費の急減を主因に、実質GDP成長率もゼロ%台に落ち込むと予想。
このように、わが国経済は依然として下振れリスクを抱えていることを勘案すれば、景気刺激的な政策スタンスと維持することが必要。短期対策としてメリハリのある景気刺激策を講じるとともに、中長期的な成長戦略を打ち出すことが重要。

本件に関するお問い合わせ先

調査部 マクロ経済研究センター 主任研究員 枩村 秀樹
TEL : 03-3288-4524
E-mail : matsumura.hideki@jri.co.jp

会社情報
社長メッセージ

会社概要

事業内容

日本総研グループ
ニュースリリース

国内拠点

海外拠点
人材への取り組み
環境への取り組み
ダイバーシティ&健康経営
会社案内(PDF版)
メディア掲載・書籍
インターンシップ

会社情報に関する
お問い合わせ