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京都議定書削減目標の達成可能性と中期目標の方向性

2010年03月08日

【要 約】

1.2008年度のわが国の温室効果ガス排出量は前年度比6.2%減と、過去最大の減少を記録した。その要因をリーマンョック以降の急激な景気悪化に求める声が大きいが、同時に省エネや二酸化炭素の排出削減努力が、徐々に効果を見せ始めていることも見逃すことはできない。2004年以降、燃焼起源の二酸化炭素の排出原単位は、▲2.3%/年で改善しており、これはオイルショック期の▲3.5%/年に次ぐものである。

2.排出原単位の改善要因は、①製造業における産業構造の転換、②旅客部門における省エネ、モーダルシフト、移動距離の減少、③物流における省エネ効果、による。一方、家庭部門や業務部門では、省エネは進んでいるものの、電力の火力発電比率上昇により、二酸化炭素の排出抑制には結びついていない。

3.史上最高の排出量を記録した2007年度には、京都議定書の目標達成が危ぶまれたが、皮肉にも2008年以降の景気悪化の影響もあり、光明が見えてきた。2008年~2012年の平均排出量は、基準年である1990年排出量と同水準にまで押さえ込むことが可能となる見込み。目標達成に向けての不足分も、2004年度以降に達成している▲2.3%/年の排出原単位の改善を続けることなどで対応可能。

4.しかし、2020年の中期目標として民主党が掲げる1990年比25%削減(真水は15%)を達成するためには、実質経済成長率を+1.3%としても、原単位を▲2.7%/年で改善し続けることが必要で、これまで以上の取り組み方が不可欠。まして、民主党の成長戦略にある成長率2.0%を達成すれば、オイルショック期と同等のインパクトを覚悟しなければならない。

5.2020年に1990年比▲25%と年率2%の経済成長を両立するために、取り組みが進む自然エネルギーの導入促進などのほかに、今後一層重視すべき政策は下記の通り。
①二酸化炭素排出原単位が低く、付加価値額の高い産業を機軸とした炭素制約下の成長戦略。
②中長期的に調達コストの上昇が予想され、しかも当面の目標達成のためだけに排出枠を調達しているに過ぎないCDMの活用は、あくまで「補足的」とする。
③思いのほか進んでいない物流部門のモーダルシフトについては、規制緩和などによりトラック輸送からのシフトを促す。
④原子力発電所の新設が困難なこともあり、二酸化炭素排出量あたりの価格が安い電力への安易な依存は、二酸化炭素排出量の押上げ要因となる。電力を中心としつつも、都市ガス、LPGのバランスに配慮した需給構造とすべき。

6.わが国が、世界最高水準の削減目標を達成するためには、あらゆる経済・財政政策を、二酸化炭素排出量への影響と関連付けて立案する必要がある。しかしながら民主党は、成長戦略と温室効果ガス削減の中期目標を独立に議論するなど、未だその方向性が定まっているとはいえない。
また、補助金依存の温暖化対策は、財政への負担が大きく持続性に乏しい。「気候変動交渉に関する日米共同メッセージ」にもとづく2050年8割削減という長期目標を踏まえれば、炭素税や規制緩和などによる持続性の高い政策が必要。

7.わが国成長戦略は、もはや炭素制約と切り離して考えることができず、成長と排出抑制の両立が図られたものでなければならない。同時に、今後わが国がどのような産業に依って立つのかを明示する産業構造への言及は避けられない。持続的な成長のためには、より排出原単位が低く、より生産性が高い産業構造へと転換を図り、そうした産業により生み出された富を内需拡大につなげていくことが必要である。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社 日本総合研究所 調査部 ビジネス戦略研究センター 藤波宛
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