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EV・カーシェアリングの地域社会への普及へ

2010年02月23日 武藤一浩


日本総研が係ってきた神奈川県でのEVシェアリング(平日は県がEVをレンタル、休日は県民がレンタル)のモデルから始まり、自治体と連携したEVシェアの取り組みが全国的に広まってきた。特に札幌市では、既存の民間企業のカーシェアリングサービスにEV車両2台を追加し、札幌市西区もカーシェアリングの会員として参加することで、地域住民と自治体の間でEVのカーシェアリングを実施している。今後、一般住民へのEVの普及とカーシェアリングを組み合わせた仕組みとして、全国に普及する一つのモデルとして期待は高い。

普及の期待が高まるEVとカーシェアリングであるが、肝心の「カーシェアリング」の本質が理解されず広まっているので幾つかここで述べておきたい。
まず、カーシェアリングとは「1台の車を複数人がシェアして利用する(シェアして1台の車両の稼働率をあげる)」のではなく、「1人で様々な車を利用できる」という概念から生まれた。例えば、「週末は家族と遠方までワンボックスカーでお出かけ」、「夕方は近くのスーパーまで買い物なので軽自動車(EV)で」、「今日は天気がよいのでオープンカーでドライブ」といった家庭での利用、「出張先の駅前に会員のカーシェア会社がサービスをしているため、出張先でも車両を利用して客先に往訪」、といったようなビジネスでの利用など、会員は様々な用途にあった車を選択しながらのカーライフが可能となる。カーシェアリング会社の老舗、米国ボストンのジップカーは、ボストンにステーション2500箇所で5000台の車両を提供し、会員数は20万人(2009年現在)にまで広がり、まだ拡大している。自分の居住徒歩圏内に、利用できる様々な車種が数十台配置されている世界だ。
また、成功しているカーシェアリングはプレミアム性の高いコミュニティを形成している。会員は、借りて返してのレンタカーの延長ではなく、コミュニティで共有する資産・財産を利用しているという考え方だ。会員が自分達で車内を掃除し、洗車も行っている。また、モラルのない会員は、会員としての資格を剥奪されてしまう。今後はネットのコミュニティとも連動していくであろう。
最後に、交通分野での地域活性化と低炭素地域社会形成を実現している点も注目だ。カーシェアの普及で個人が所有する車が少なくなる。これら会員は、車を利用するまでも無い外出となれば、コスト面で安い地域交通機関を利用する。つまり、赤字になりがちな地域交通機関の利用を促しながら、全体の車利用量を減らす(渋滞量も減らす)ことで低炭素地域社会の形成に寄与しているのである。

以上を踏まえ、日本総研は国内の地域特性にあったカーシェアリングの普及と、カーシェアリング車両としてEV導入を増やす取り組みを進めている。様々な地域の方々と更に連携を深め、具体的なモデルを多数創出していきたい。



※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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