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子どもESGレポート ~子どもコミッションイニシアティブ構想~

2024年04月16日 小幡 京加、杉原 絵美、福谷 文音、佐藤 佑美子、亀山典子、増田 のぞみ、福田隆士村上芽


 2023年4月に施行された「こども基本法」により、初めて、子どもの権利条約の定める子どもの権利を明記した基本法ができた。また、同時に「こども家庭庁」が創設されたことにより、子ども関連の政策に関する司令塔ができ、子どもの意見を反映させた政策形成の推進など、国内の子どもをめぐる法制度は大きく変化した。
 また、急速な少子化の進展により、子どもや子育て環境に対する社会的な関心が高まっている。しかし、現段階では、子どもの権利を尊重することが社会・経済に及ぼすポジティブな影響が幅広く理解されているとは考えにくい。そこで、日本総研では「子どもコミッションイニシアティブ」を構想し、以下の取り組みが必要だと考えた。
 ①子どもの権利の尊重が、社会(地域や企業などの組織を含む)にとってどのようなポジティブな影響を及ぼすのか、逆に、尊重しないことがどのようなネガティブな影響を及ぼすのかという理解の促進
 ②社会のなかで子どもの権利がどのように尊重されているかということを、独立した立場から監視するメカニズムの意義に関する理解の促進
 ③子どもに関わる課題の改善・解決策を様々なステークホルダー(政府、自治体、団体、教育・医療・福祉機関、研究者、企業など)が共有し、互いに学びながら必要なことを実行に移すための議論の場

 民間企業が雇用を通じてのみではなく、製品・サービスを通じて子どもの権利を尊重するべきである、という視点のもと、「子どもESG調査」を実施した。対象は、子どもの生活への関わりが特に深い8種類(食品、日用品(生理用品)、医薬品、スポーツ用品、不動産開発、通信、保育所、学習塾)の製品・サービスを有する上場企業である。
 調査の結果、企業活動を通じた人権の尊重に関する体制は、上場企業において進展しつつあるが、セクターによって濃淡があることが分かった。また、人権尊重のためにデューディリジェンス等に取り組む企業でも、「顧客としての子ども」「地域住民としての子ども」などのように企業のステークホルダーとして幅広く子どもを捉える視点や、経営に子ども世代の意見を生かすという視点は限定的であった。
 また、セクターごとに、子どもの育つ環境へのポジティブな影響を増やす経路を分析し、ネガティブな影響を減らすために今後に期待したいポイントを抽出した。どちらの場合でも、子どもを企業経営のステークホルダーとして捉え、断片的ではなく包括的な、子どもの権利への理解に基づいて実施されることが重要である。
 今後、子どもの権利とビジネスの関係への理解をさらに広げ、子どもの権利を尊重するビジネスプロセスや効果について、明らかにしていく必要がある。企業と子どもの関係を経営の「リスクと機会」の観点の1つに含めるべきともいえる。また、子どもに関わる様々なセクター間での連携が、人権尊重面とビジネス面の両輪で進むことに期待したい。

※本調査についてはこちらからダウンロードが可能です。
 子どもESGレポート ~子どもコミッションイニシアティブ構想~
 子どもESG調査チーム

<本調査に関する問い合わせ先>
 エクスパート 村上 芽   murakami.megumuatjri.co.jp
 (メール送付の際はatを@と書き換えての発信をお願い致します)


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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