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適切なケアマネジメント手法の策定、普及推進に向けた調査研究事業

2024年04月05日 辻本まりえ齊木大多田理紗子山内杏里彩、南かのん、山崎香織


*本事業は、令和5年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 「ニッポン一億総活躍プラン」で令和7年度までと予定された「適切なケアマネジメント手法」に関する調査研究は、期別・疾患群別に想定される支援内容を整理することで、将来の生活予測におけるケアマネジャーの知識水準を確保するとともに、多職種連携の推進を目的としている。
 社会保障審議会介護給付費分科会「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」(令和2年12月23日)では「適切なケアマネジメント手法」に関して実効性が担保されるような方策について検討していくべきと言及され、令和6年度より介護支援専門員の法定研修に「適切なケアマネジメント手法」の内容が追加されること(老発0222号第2号、令和5年2月22日)となった。

 こういった背景を踏まえ、本調査研究事業は、介護支援専門員による「適切なケアマネジメント手法」の実践での活用を念頭に、具体的な活用例を掲載した事例集の作成を行うとともに、初学者も活用可能な(仮称)初学者向けチェックリスト(案)の検証を実施した。また、「適切なケアマネジメント手法」自体の拡充として知見の改訂箇所の特定や、事例の特徴に応じて着目すべき視点のデータセットの作成方法の検証、「適切なケアマネジメント手法」に関する各地域の取り組み状況の把握、今後の方向性について検討を目的として実施した。

2.事業の主な内容
(1) 手法の認知・導入に向けたツールの整備
 ①「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2の作成

 「適切なケアマネジメント手法」を初めて学ぶ人も具体的な内容をイメージできるようなツールとして、「適切なケアマネジメント手法」を活用した事例や想定される支援内容の具体的な取り組みなどを「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2として取りまとめた。また、「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2の周知・解説のため、解説動画(3本)を作成するとともに、「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2解説セミナーを2回開催し、日本総研公式YouTubeにて公開した。
 ・「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2
 ・「適切なケアマネジメント手法」の手引き 解説動画(日本総研公式YouTube)

 ②(仮称)初学者向けチェックリスト(案)の検証
 「適切なケアマネジメント手法」を初めて学ぶ人のエントリーツールとして過年度に作成した(仮称)初学者向けチェックリスト(案)(独居世帯、高齢者のみ世帯)について、今後の成案化・公開を目指し、内容の妥当性や負担感、想定される活用場面の確認のための検証を行った。
 検証は研修会形式で実施し、全国から計851名が参加した。当日の検証に加えて、追跡調査アンケートやヒアリング調査等による追加調査も実施した。検証結果を踏まえ(仮称)初学者向けチェックリスト(案)の成案化・公開に向けた課題を整理した。

(2)「適切なケアマネジメント手法」の拡充
 ①参照した知見の改訂箇所の特定

 過去に「適切なケアマネジメント手法」の作成にあたって参照したテキスト・ガイドライン等の改訂箇所、令和2年度以降新たに公開されたガイドライン等において「適切なケアマネジメント手法」に反映すべき箇所を特定した。

 ②事例に応じて着目すべき視点の検証
 事例の概要や特徴に応じて着目すべき「想定される支援内容」を示唆する仕組みの整備に向け、「事例に応じて着目すべき支援のデータセット」について、パイロットスタディを実施した。パイロットスタディは、「適切なケアマネジメント手法」を熟知した介護支援専門員(レビュワー)によるスペシャリストレビューの形式で、①レビュー事例の収集、②レビュワーの選定、③レビューの実施、④レビュー結果の取りまとめの手順で実施した。
結果を踏まえ、データセットの大規模な作成計画(案)を取りまとめた。

(3) 普及に向けた取り組み状況の把握
 今後の「適切なケアマネジメント手法」の普及の検討材料とするため、各地域における「適切なケアマネジメント手法」の普及・活用状況を把握した。

(4) 今後に向けた検討

 「ニッポン一億総活躍プラン」において2026年度までの実施と予定された「適切なケアマネジメント手法」に関する調査研究事業の第3期に向け、実施すべき事項や本事業の到達すべき点などについて、検討委員会及びワーキング・グループにて議論した。

(5) 検討委員会及びワーキング・グループにおける検討・確認
 有識者や関係団体等と厚生労働省で構成する検討委員会、ケアマネジメント実務に明るい有識者で構成するワーキング・グループを設置し、上記(1)~(4)の結果について共有および検討を行った。

3.事業の主要な成果
 令和5年度事業の主な成果は、①「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2の作成、②(仮称)初学者向けチェックリスト(案)の成案化に向けた課題の整理、③「事例の特徴に応じて着目すべき視点のデータセット」の作成方法案の取「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2の表紙と各章の概要定される支援内容44項目における具体的な取り組み例を紹介した。

 ①「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2の作成
 「適切なケアマネジメント手法」の初学者にとって手に取りやすく、手法を取り入れるハードルを下げることを目的に、「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2を作成した。手引きその2では、手法を学ぶ意義が腑に落ちていない人や手法を使うイメージができない人を対象に、手法の概要や構成、過年度の実践研修参加者の事例の取り組みの解説、基本ケアの想定される支援内容44項目における具体的な取り組み例を紹介した。

「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2の表紙と各章の概要


「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2解説動画・セミナー動画の公開
 「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2の解説動画(3本)を作成し、日本総研公式YouTubeに公開した。令和3年度、令和4年度に公開した動画を含め、本事業に関連する動画は合計507,820回再生されている(令和6年3月26日時点)。また、「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2解説セミナー(2回)を開催し、日本総研公式YouTubeに公開したアーカイブ動画は延べ5,937人が視聴した(令和6年3月26日時点)。

 ②(仮称)初学者向けチェックリスト(案)の検証
 令和3年度、令和4年度に「適切なケアマネジメント手法」のエントリーツールとして検討した(仮称)初学者向けチェックリスト(案)(独居世帯、高齢者のみ世帯)について、項目の構成や内容、難易度の妥当性、活用における負担感や効果について、全国851名のケアマネジャーを対象とした検証を実施した。
検証の結果、(仮称)初学者向けチェックリスト(案)には(A)ケアマネジメントにおける視点の抜け漏れに気が付く効果、(B)適切なケアマネジメント手法の学習につながる効果が確認された。

 (A)ケアマネジメントにおける視点の抜け漏れに気が付く効果

 (仮称)初学者向けチェックリスト(案)の回答効果として、参加者の86.7%が「情報収集の抜け漏れがわかった」を挙げており、ケアマネジメントにおける視点の抜け漏れに気が付く効果が確認できた。

 (B)適切なケアマネジメント手法の学習につながる効果
 検証研修会受講前後における手法に関するツールの学習状況の変化を確認したところ、すべてのツールについて「しっかり学習した」、「少し学習した」という参加者の割合が増加しており、手法の学習につながる効果が確認された。


 ③「事例の特徴に応じて着目すべき視点のデータセット」の作成方法(案)の取りまとめ
 事例の概要や特徴に応じて着目すべき「適切なケアマネジメント手法」の想定される支援内容を示唆するしくみの整備に向け、同仕組みを構成するデータセットの作成方法について、パイロットスタディを行った。
 検証結果やレビュワーの意見、ワーキング・グループでの議論を踏まえ、「事例の特徴に応じて着目すべき視点のデータセット」について、手順や留意点を作成方法案として取りまとめた。また、今後大規模なデータセットの整備に向け、大規模なデータセット作成計画(案)を作成した。

大規模なデータセット作成計画(案) 


4.今後の課題
 これまでの成果も踏まえた検討の結果、今後本テーマが取り組むべき課題として、(1)多職種協働による実践での手法の活用(①ケアマネジャーによる実践での手法の活用、②多職種間の「共通言語」としての活用、③保険者向けの普及)、(2)業務への組み込み検討(事例の特徴に応じて着目すべき視点をまとめたデータセットの活用)、(3)手法のメンテナンスを含めた長期的な体制等の検討をそれぞれ抽出・整理した。

※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
 適切なケアマネジメント手法の策定、普及推進に向けた調査研究事業 報告書

別冊資料
 「適切なケアマネジメント手法」の手引きその2
 「適切なケアマネジメント手法」基本ケア項目一覧(概要版、ページ分割版)

<参考>
 本手法に関連して厚生労働省から介護保険最新情報での情報提供も行われています。こちらもご参照ください。
 適切なケアマネジメント手法の策定、普及推進(厚生労働省ウェブページ)

本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター マネジャー 辻本 まりえ
TEL: 080-9673-8693   E-mail: tsujimoto.marieatjri.co.jp(メール送付の際はatを@と書き換えての発信をお願い致します)
「適切なケアマネジメント手法」に関する連絡窓口 : 100860-care@ml.jri.co.jp
※メンバー間での共有のため、メーリングリストへ連絡いただけると助かります


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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