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JRIレビュー Vol.7,No.110

少子化対策の目的を見直し、人口政策と生きやすさのための政策の立案を

2023年08月31日 村上芽


日本の2022年の年間出生数が80万人を下回り過去最少を記録し、2023年5月に発表された人口推計では、出生率がさらに低下するとの前提を置いた。政府では、3月に少子化対策の強化のための「試案」が示され、4月にはこども家庭庁が発足した。

今回の「試案」と、2020年発表の「少子化社会対策大綱(第4次)」の中間評価(2022年7月)が示した今後の方向性を比較すると、試案では基本理念の一つに「社会全体の構造・意識を変える」が掲げられたのをはじめ、各項目における金額的支援の拡大幅は大きくなっているものの、項目の立て方などはこれまでの議論の焼き直しになっている。少子化対策に関する考え方そのものはさほど新しくなっているわけではない。

一方で、過去約50年にわたり出生数が減っていない国々(ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデン)と比較すると、わが国の少子化対策における課題は、その施策の範囲が出産や子育てのごく一部に限定されていることにある。少子化対策の目的があいまいで、数値目標の置き方が政府の掲げる「希望出生率」とも合致していない。また、結婚制度、家族の在り方、移民との共生、子どもの権利の擁護、教育などに関する幅広い議論が少子化対策と結び付けて行われていない。

ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデンにおける新型コロナウイルス感染症の大流行期を挟んだ出生数や関連する政策の動向をみると、いずれの国でも、日本と同じような出産・子育て・両立支援策の強化を進めると同時に、「移民政策」「家族政策」「労働市場」が出生率や出生数に連動、または影響していることが意識されている。また子育て先進国の意識が強いスウェーデンでは、子どもの視点を重視した政策に特徴がある。

このような現状認識の下、少子化や人口というテーマについて、国民的な対話や議論を行う場づくりが必要と考える。そのうえで、政策の方向性としては、今後も日本という国で人々が文化や歴史を受け継いで世代交代しながら生き続けていくことを大目的として、定量的な情報を扱う「人口政策」と、今を生きている人々にとっての「生きやすさのための政策」に政策を再編することを提案する。短期的には、結婚制度の拡張や、男女ともにシングルでも安心して子育てができる労働環境づくりを提案する。

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