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「おひとりさま高齢者」の何が問題なのか

2023年05月23日 辻本まりえ


 日本総合研究所では、周囲の人々との人間関係の希薄化や家族の小規模化に伴い、必要な支援を身近な人から受けられない高齢者を「おひとりさま高齢者」と命名しました。そして、こうした高齢者の課題について、地域で支援する体制や仕組みの検討を目指し、「SOLO Lab(SOcial connectivities for LOcal well-being Laboratory、ソロラボ)」を2021年11月に立ち上げました。「おひとりさま高齢者」の自律的生活支援の研究会を設立
 SOLO Labの議論を踏まえて、2022年10月には提言としてホワイトペーパーを取りまとめています。個・孤の時代の高齢期
 
 足元の社会のさまざまな仕組みは、おひとりさま(特に高齢期になったおひとりさま)に、必ずしも優しくないと感じています。例えば、以下のような困りごとが起きる可能性が大いにあります。

〇具体例1:親族など必要な人にすぐに周囲の人が連絡できない
 おひとりさま高齢者が路上で倒れた場合など、身分証等でその人自身を特定することはできても、同居でない親族等への連絡は簡単ではありません。このような場合、戸籍等で親族がいるかどうかの確認はできますが、親族がいることがわかっても、住所しかわからないこともあります。その場合、郵便等の一方通行の連絡手段しかなく、すぐに連絡ができない等の問題に陥ります。携帯電話の普及で本人なら、いつでも連絡できた親族に、支援者は個人情報保護の壁に阻まれて、つながることが難しいという状況さえ生じます。

〇具体例2:生前の手続き情報を人に伝えられない
 自身で終活の手続き(葬儀の手配や身元保証会社との契約など)を行っていても、それらの情報を周囲の人々や同居でない親族等(手続きの履行を確認してくれたり、契約があることを伝えてくれる人)に前もって共有されていないと、せっかく備えていたことが実行されないという問題が起きます。従来であれば、同居の家族が把握してくれており、いざとなった時には、そのとおり実行して貰うことが可能でした。これからの「おひとりさま高齢者」においては、契約があることをどのように周囲の人に伝えるのか、さらにはこれらの契約が実行されたことを、どのように担保するのかが課題となります。

 これらは、支援者の方に伺ったほんの一部の困りごとに過ぎません。支援の現場や実際にはもっと数多くの困りごとが起きています。(参照1)
 例えば、現在おひとりさまではない夫婦世帯であっても、片方の配偶者が亡くなってしまうと残された高齢者は「おひとりさま」になってしまいます。残された高齢者が認知症等の場合には、亡くなった方への対応が十分にできないという問題が生じる可能性があります。また、子供がいる高齢者であっても同居していなかったり、その子供の子育てのタイミングと重なることで、子世代側に過度な負担がかかってしまうこともあります。

 家族がいてもいなくても、家族以外の人に頼ることができるという選択肢が一般的になること、それらを支えるための社会の仕組みが実装されることが必要だと私は考えます。
 2021年度からのSOLO Labでの検討、2022年度のホワイトペーパーでの提言を踏まえて、2023年度にはいよいよ「おひとりさま高齢者」支援に関する社会実装を進めていく予定です。終活に関連する情報の蓄積・伝達や、おひとりさま高齢者支援の方法について、自治体の方々とも連携して、具体的な実装方法を検討していきます。
 具体的なことは、改めてリリース等でご案内いたしますが、ご賛同いただける方々には、是非ご一報頂けますと幸いです。

(参照1)(SOLO プロジェクトに関する提言は以下のYouTube動画でも行っています。
SOLO Lab(おひとりさま問題)


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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