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女性の活躍推進に向けて
中高年男性からの理解を得るために必要な視点

2016年03月07日 小島明子


 2015年8月に、女性活躍推進法が成立し、2016年4月から労働者301人以上の大企業は、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが新たに義務づけられることとなりました。女性の活躍を推進していく企業にとっては、自社を取り巻くステークホルダーとの調整が今後、求められることになります。現在、企業の管理職を男性が占める割合は約9割に上り、男性管理職、さらには管理職層の多くを占める中高年男性が非常に大きな影響力を持つステークホルダーであることは間違いありません。女性の活躍推進は、男性管理職からの理解や協力を得ることが非常に重要になります。

 男性管理職からの理解や協力を得るための施策を検討する前には、男性管理職の働く実状を把握し、理解することが必要です。米国で1993年に発行されたワレン・ファレル氏の著書「男性権力の神話」(注1)によれば、男性が家庭における経済的責任を負うが故に、長時間労働や危険な職業に就き、女性に比べて自殺率が高く、平均寿命も短いという過酷な現実があることを示しています。男性が働きながら生きづらさを感じている点は、米国だけではなく、日本にも共通する部分があるのではないでしょうか。
 本稿では、男性管理職、特に管理職層に多くを占める日本の中高年男性が感じる生きづらさに関わる3つの要因に着目したいと思います。

 1つ目は、男性が抱える経済的責任の重さが挙げられます。平成27年版男女共同参画白書によれば、6割以上の女性が出産を機に離職する傾向が続いています。女性の非正規雇用の比率を見ると、25~34歳(42.1%)では4割であった非正規雇用の比率が、35~44歳(55.4%)、45~54歳(59.8%)と年齢層が高くなると半数を超えています。日本では、女性の多くが出産・子育てで離職をし、再就職をしても正規雇用従業員としての職を見つけることは難しく、結果として男性側の経済的責任が重くなってしまいます。経済的責任の重い男性にとって、一時的な離職、収入よりもやりたい仕事を優先する転職や起業(配偶者からの理解を得ることも含めて)をすることは容易ではなく、私生活の時間ややりがいを犠牲にして、現在の仕事を続けることを優先している男性も多いと考えられます。
 2つ目は、固定的価値観に基づく社会や家庭からの男性に対する要求が挙げられます。内閣府「『男性にとっての男女共同参画』に関する意識調査報告書」(平成23年)によれば、「男もつらいと感じることがある」と回答した割合は、年代を問わず約6割以上となっており、特に40歳代と50 歳代においてその傾向は強くなっています。つらさを感じる理由としては、「仕事の責任が大きい、仕事ができて当たり前だと言われること」(36.1%)、「なにかにつけ『男だから』『男のくせに』と言われること」(30.1%)、「自分のやりたい仕事を自由に選べないことがある」(29.4%)、「妻子を養うのは男の責任だと言われること」(27.7%)が約3割近くを占めています。固定的価値観に縛られ、仕事や家庭に関わるプレッシャーを強く感じている状況がうかがえます。
 3つ目は、多様なキャリアの選択の難しさです。年功序列型かつ終身雇用を前提として採用する日本企業に勤務してきた男性の多くは、多様なキャリアという選択をすることが難しい状態で働いてきました。中小企業庁「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業 報告書」によれば、兼業・副業を容認している企業は、アンケート回答企業全体の3.8%であることが示されていますが、兼業・副業を明確に容認している企業はほとんどありません。さらに、OECD「Society at a Glance 2005」によれば、家族以外の友人、同僚やその他の人々との交流をしていない人の割合は、日本が最も多く15.3%です。男女含めて、地域社会などで多様な人々と交流する時間を過ごしている人が諸外国に比べて日本は少ないことがうかがえます。男性にとって、企業勤め以外の多様な活動を見つけ、参加をしていくことは容易なことではなかったと考えられます。

 女性の活躍推進を進める上では、女性の管理職への登用は重要な施策の1つですが、男性側の登用機会の減少や心情的な抵抗感を引き起こす施策でもあります。中高年男性が抱える生きづらさを理解しないまま強引に進める女性の活躍推進策は、組織内での見えない軋轢を生む可能性も否定できません。
 女性の活躍推進が目指すところは、多様な価値観を許容しながら、制度や施策を通じて、多様なキャリアの選択を可能にしていける職場づくりです。優先順位として、女性や子育てが必要な男性にフォーカスがされがちですが、それらの制度や施策を、中高年男性含め全従業員の働きやすさを考えるきっかけにしていくことも重要です。多様な活動を実現でき、輝く中高年男性が増えれば、一億総活躍社会づくりにもつながるのではないでしょうか。


(注1) ワレン・ファレル(2014)「男性権力の神話≪男性差別≫の可視化と撤廃のための学問」久米 泰介訳、作品社



※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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