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イノベーション勉強会:第125回討議録

研究本_M&I勉強会(第125回)
「Web2.0時代の企業のあり方」討議録
(記録:岡本。その後、参加者による修正・加筆)

1. 日時、場所、参加者

日時、場所 2007年8月22日(水) 8:30~10:00 日本総 合研究所303会議室

参加者 梅田(コンサルティング営業部)、水谷(同)、篠崎(マーケティング革新クラ スター)、新保(TMT戦略クラスター)、河野(同)、倉沢(同)浅川(同)、山浦(同)、岡本(同)
2. 発表の概要
「Web2.0時代の企業のあり方」( TMT戦略クラスター 山浦康史)
≪題材≫
Web2.0とは何なのか、また、企業 として何を行っていくべきか、など。
≪主な内容≫
 
テーマ選定の背景

世間ではWeb2.0が騒がれているが 、そもそもWeb2.0が何なのか、企業をどう変えるのかを勉強したかった。

Web2.0は曖昧な概念であるが、経 営者はそれに対応しなければならず、そこにコンサルティングニーズがあるのではないかと考えた。
コラム「Web2.0に戸惑う大企業」 (湯川抗:富士通総研経済研究所上級研究員)の概要

勉強の時代は終わった(2006年11 月にサンフランシスコで開催された「Web2.0 Summit」を通してWeb2.0で見えてきたこと。)


主要プレーヤーは、「オープン化、ユーザー参加 、インタラクションの促進、スピード重視の開発、ウェブ機能の拡充といったネットの進化を念頭にお いたサービスの導入」という戦略をとっている。


「Web2.0ベンチャー」に流入するリスクマネーは 増加傾向にあり、他方、低コストで起業可能な環境が整いつつある。


本サミットでは、「2.0」という名前を冠している ものの、現状認識や将来像などではなく、実際のサービスのあり方と方法論が議論の主体である。


ユーザーは自らが参加できない、あるいは気軽に 情報発信できないサービスに満足することはないし、ロングテール現象がなくなることもない。


インターネット、あるいはインターネットの進化 の方向性に適応していくことを第一に考え、次にそうした変化に対応しつつ、生産性や効率性を向上さ せることができるのかを検討するといった手順が順当なのではないか。

経営者が突きつけられた課題


Googleなどが公開しているAPIを活用できるように なった現在、個人でも企業と同様のサービスを提供できるような下地が整い始めている。


サイトを制作・供給しているのが企業なのか個人 なのかを、サイトの見た目とサービス内容だけで区別することは容易でない。


ユーザー生成型コンテンツの増加は、「企業にと って必要な知識はどこにあるのか?」という本質的な問題提起である。


「研究開発課題をかける世界の一流企業と、その 研究を専門とするトップクラスの科学者たち」をマッチングする企業も現れた。


しかしながら、大企業がWeb2.0的な要素を自社の ビジネスに取り入れることは困難であり、自社のリソースをネット上でオープンにすることは困難であ ろう。


製品やサービスの評価はウェブ上のユーザーの反 応にゆだねられつつあり、大企業の社員が直接ブログでユーザーと対話することで評価を高める試みも 増えている。


現在のインターネットビジネスは、大企業の経営 者がこれまで最大の信頼を寄せてきた組織のあり方そのものを否定しかねない変化を起こしている。

社員に市場との対話の機会を


大手IT企業は「Web2.0の時代に即したサービスを 提供しなければならない」との強迫観念に駆られている。


日本の大手IT企業は、米ネット企業などに比べネ ットビジネスの先進性にかけているとの危機感があり、さらにサービスの「利用者」としても、その効 用を生かしきれていない。


クリス・アンダーソンは著書” The Long Tail” のなかで、ニッチ製品を手に入れるコストの低下が欠かせないと主張し、さらにコストの低下に向けた 次の「3つの追い風」が吹いていると指摘している。



- 「生産手段の民主化」 :ハードウェアの価格低下、画像 や映像を簡単に編集できるソフトウェアやウェブサービスの登場



- 「流通の民主化」 :インターネットの普及そのもの



- 「需要と供給を一致させる媒体の誕生」 :検索エンジン やレコメンデーションの技術進歩


企業がネットでの存在感を示すには、ユーザーの 声を直接組織内に取り込めるようにすることが重要。


企業内の一個人がユーザーの声に耳を傾ける体制 を整えると共に、社員自身がきちんと発言することを許容できるかという判断が問われている。


新しい世界には未知のビジネスチャンスがあると 考えるのが自然であるが、Web2.0的インターネットビジネスには確固たるビジネスモデルを確立できて いるものが少ないのが現状である。


現在のインターネットビジネスの世界に自らの身 をさらし、経験を積んでいくことが次の世界を正確につかみとることにつながる。
論点

Web2.0について。


参加者の皆様はWeb2.0どのように捉えているのか。


現在どれだけのユーザーがWeb2.0に対して積極的 なのか、今後はどうか。企業側は?


1人のジャーナリストより100人の素人のブログ発 信⇒1企業のサービスより100人の素人のサービス提供のような流れが起こるか(wisdom of crowds が Googleを超えるか)

企業の取り組みについて。


サービスの提供者(IT企業など)



- 「企業家になるには今ほど良い時期はない」は正しいか?



- 個人が企業並みのサービスを提供できるようになってきて 、企業側としてはどう差別化するか。



- 大企業とベンチャーの差別化はどうか。



- なぜ日本では先進的なネットビジネスが生まれないのか。


サービス使用者(一般企業)



- Web2.0に乗り遅れるとどうなるか。乗らない手はあるのか 。どの様な業種なら乗るべきか。



- 大企業がWeb2.0の流れに乗るためにはどうすればよいか。



- リソースのオープン化/企業文化/社員一人ひとりが Web2.0活動のために社外と対話するリスクは/情報漏えい/ブランド価値低下/ブログ炎上


Web2.0を使用する側は他社の成功例を後から導入 するという形では遅いか 。



- 提供側はネットワーク効果を狙うため、先にユーザーを囲 い込む必要があるが。

全体


コンサルティングを行うならば、どのような場面がありうるか。


Web3.0はどのようなもので、Web2.0の様なインパ クトがあるか。
3. 討議の内容
本コラムは、何かの狙い・意図や プロモーションの一環として公開していると考えるほうが妥当ではないか。このソースを情報提供者( 山浦)としてどう捉えて、何を議論したいのか、自分の一貫した意見は何か、を発表の準備として明確 にすることが必要である。【倉沢】
この情報ソースが提供された時期 (2007年2月)は、Web2.0関連としては遅い。感覚的に3周遅れという感じを受けた。大企業の管理職へ のアピールを狙ったものなのではないか。【河野】
一般企業がWeb2.0をどう捉えるべ きかについて議論をしたい。マーケティング手法として、ITシステムとして、提供する側として、利用 する側としてといった観点が考えられる。【山浦】

一般的には、マーケティング、社 内活性化、ブランディングという使い方が主なのではないか。【河野】
コラム中にユーザーは情報発信で きないサービスに満足することはないとあるが、情報発信しているユーザーがどの程度いるのかといっ た疑問がある。

当然ながら「濃密に情報発信する 層」と「完全受身の層」と「その中間の層」がある。ウェブ上でも様々なデータを取得することができ るので、まずは自身で調べてみることが必要ではないか。【河野】
Web2.0は個人も情報発信できると いう双方向性だけでは捉え方が狭いと考えられる。これまでオープンになっていない情報がオープンに なることや、webカメラによる映像をweb上に流すといったようなこともWeb2.0的であり、個人の捉え方 によるところも大きい。

捉え方は個々や立場で様々である が、世の中がどのようになって欲しいかということにも大きく左右されるのではないか。【倉沢】
ウィンドウズとリナックスがよく 対比されるようなクローズとオープンの観点や、鉱山会社がウェブを活用して不特定多数の人間から情 報を取得することで金脈を見つけたなど、ビジネスモデルに関することの議論も必要ではないか。【水 谷】

研究者たちは論文、雑誌といった ことで、これまでもオープンにコミュニケーションを行っている。捉え方を間違えると、オープン化= アウトソーシングということになるので注意する必要がある。【河野】

我々のコンサルティング業務をオ ープン化できるかといえば、これはありえないと思う。オープン化には向き不向きの領域がある。【倉 沢】
公的機関からの情報発信に関して 、Web2.0を活用した取り組みを考えてみたが、アイデアが思いつかない。【篠崎】

特定の公共機関は、Web2.0的要素 は、逆説的に言って「取り入れるべきではない」のではないか。人は情報の何を基準に動くのかという 観点にたつと、例えば政府によって権威づけされた情報だから、という情報摂取の動機付けも厳然と存 在する。多様・大量の情報の中でぶれてはいけない情報はあり、官報などはこれまでの発信スタイルで あるべき。【倉沢】
Web2.0という考え方が出始めてか らずいぶんたつが、これまでの生活の変化や体験などを踏まえて、改めてWeb2.0を考えると新鮮である 。【新保】
クリス・アンダーソンの言う「生 産手段の民主化」(道具ないし経済の源泉が資本家から労働者へ移転)というのは、エンゲルスとマル クスなどの考え方にも通じる。

「生産手段の民主化」とは、これ まで資本家のみが所有していた生産手段(工場や機械など)が民主化され(労働者の側にそのイノベー ションの源泉が移り)、生産力(=経済力)が飛躍的に向上することで、その上部構造(=経済体制な ど)に革命が起こる(相転移する)ことに近いものと考えられる。【新保】

100年前とは労使間の格差や産業 ごとの構造が大きく違うので一概に言えないが、これまでのインターネットの革命的な技術を介しても なお、人間の情報流通と経済行動が今から革命的に変化するとは考えにくい。学術的議論から長編アニ メのメッセージまで「人はそう簡単にはわかりあえない、革新しない」という原則論のほうが、この100 年の歴史を見る限り、しっくりくる。革命的な社会変化に期待するという考え方には、慎重になりたい 。【倉沢】
ロングテール現象を「Wisdom of Clouds」という観点で考えると、ロングテールの尻尾の部分にWisdomがある(Social Valueが高い)と 考えられる。特に、革新的なことは1~2名の考えが発端となっているのではないか。

雑誌やテレビなどの記事は似たり 寄ったりで、価値が少ない。また、タイトルなどの付け替えなど編集者の意図が働くことも多い。これ に対して、ネット上のコンテンツは、一見クズのようなものでも高い価値があることがある。最近はア ルファブロガーと言った言葉があるように、ブログなどにも新鮮でレベルの高い記事・論考が多くなっ てきている。

≪補足≫ ノーム・チョムスキー (32歳でMITの教授になった天才的な言語学者・社会批評家)の言葉を引用しておきましょう:


「テレビも新聞も何で同じニュースばかりを流す んだ!」(政府・大企業・マスコミが大衆をコントロールする3つの方法)



- ①マスメディアはニュースを選別する。②マスメディアは 本当に重要な問題を語らない。③マスメディアは人々を孤立させる。



- チョムスキ ーとメディア-マニュファクチャリング・コンセント-



- SIGLO 『チョムスキーとメディア』/『チョムスキー 9.11』

海外に居住する日本人のブログか らも、日本には伝わってこない様々な情報を得ることができる。

たった1人の“素人”が真実を書 くことで、これが拡がっていく。これを可能とする、Enablerとしての役割がGoogleなどであろう。【新 保】
Googleは、源流(イノベーター) と河口(幅広いユーザー)を押さえるという手法をとった。そのなかで、幅広く広告対価を支払う仕組 みなど、オープンソースを利用しまくったということが言える。米国の700MHz帯のオークションに Googleが参加するというのもこの手法の一環ではないか。【新保】
Googleのマネジメントは既存のス トラクチャでは評価されないものである。知的好奇心を刺激し、Googleの取り組みに参加することや貢 献することがステイタスとなるような、いわばGoogle Societyを作り、それを継続させるためのマネジ メントを行っている。【新保】
ドコモのi-modeはこれまでとは異 なる垂直統合のあり方と言える。クローズということで言えばMicrosoft的であろう。【浅川】
GoogleはMicrosoftに対する対抗 心が強く、レガシーシステムへの破壊という意味では破壊者、外国市場へのこじあけという意味では、 いわば新自由主義的な行動をとっているのではないか。【新保】
過去にMicrosoftに敗れたAppleが 、今般のiPhoneビジネスにおいて、米国AT&Tからバックマージンを得るなどの立場までになってい る(バーゲニングパワーを変えた)ことも、革命的であると言えよう。【新保】
4. 次回予定

2007年8月29日(水) 8:30~
以上






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