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日本総研ニュースレター 2014年5月号

介護保険法改正は「ギャップシニア」市場拡大の好機

2014年05月01日 齊木大


介護保険法改正で「ギャップシニア」市場が活発化する
 これからの高齢化は数の増加とともに高年齢化も進むため、必ずしも元気ではないが要介護でもない高齢者が増加する。筆者らが「ギャップシニア」と呼ぶこのような状態の高齢者は、今後のシニア市場で着目すべき存在だ。
 ただし、潜在市場としての規模は大きくても、商品・サービスの選択肢が少ないために消費に結び付いていない。これは、現在のギャップシニア向け事業の大半が自治体事業であることなどが要因だ。ギャップシニアとは日常生活を送ることはできるが痛みや体力低下などにより活動量や意欲が低下し始めている高齢者を指す。心身の状態で定義づけられるため75~85歳で出現率が大きいが、特定の経済的状況や居住形態に多いということは無い。二次予防対象者および要支援高齢者と捉えると全高齢者の約4割、推計1,000万人を超えると見られており、消費市場としての可能性は十分にある規模だ。
 しかしこうした状態を把握できるのは自治体あるいは自治体から介護予防事業を受託している事業者に限られるため、一般の民間企業にはギャップシニアの悩みや好みを捉えきれず、かつデリバリーするチャネルも分からない。また、ギャップシニア自身が「我慢」や「あきらめ」によって無意識に自らのニーズを封じ込めてしまう場合が多いことも、彼らの悩みや好みが把握されにくい要因だ。
 しかし、平成27年度に予定される介護保険法の次期改正によって、自治体がギャップシニア向けの民間サービス拡大を後押しするようになりそうだ。改正によって、自治体は要支援高齢者と二次予防対象高齢者を対象とする事業のメニューを新たに考えたり、より効果的なものを重点的に実施したりしやすくなる。一方、このように自治体が自主的に多様な事業を運営・展開しやすくなる反面、財政的・人的資源には限りがあるため、自前にこだわらず民間企業との協働を志向するようになると考えられるからだ。

多くのメリットが期待される「官民協働型デザインプラットフォーム」を活用した商品・サービス開発
 ギャップシニア市場の拡大は、ギャップシニアにとっても、悩みや好みに合った商品・サービスの選択肢が充実するメリットがある。そこで筆者は、官民協働型のプラットフォームの創設を提案したい。具体的には、行政が持つギャップシニアのデータをオープンデータ化して企業が開発した商品・サービスを、自治体等を介してデリバリーし、商品・サービスの検証・評価までを行うプラットフォームだ。
 自治体にとっては「民間サービスが充実する」メリットが、民間企業にとっては「ニーズが把握できる・協創できる」メリットが得られる。特に開発予算が限られ、介護保険外の商品・サービスの幅が狭かった企業は、このプラットフォームを活用することでギャップシニアにとって魅力的な商品・サービスを開発しやすくなるはずだ。また介護保険事業者にとっても商品・サービスのデリバリーによる保険外収益が拡大すれば、介護報酬改定による収益変動リスクが小さくなる。

技術を活かし、ニーズ起点による商品・サービスの開発を
 プラットフォームを通じてこうしたメリットを得るためのポイントは、①ギャップシニアとの協創、②使いやすい商品・サービス設計の2つだ。
 ギャップシニアは、何かが「出来ない」というより「今まで通りにはうまくいかない」程度だが、自分の悩みや好みを自覚していない場合も多い。受身ではニーズを把握できないため、「自然と日常生活が過ごしやすくなる」ことなどが分かりやすく伝わる商品・サービスの提案が重要だ。
 ギャップシニア向けの商品やサービスを使用することへの抵抗感を減らすには、出来る限り人的サービスではなく、モノ・環境で悩みを解決するように設計することが重要だ。
 また、サービスや商品の力を高める一方で、価格・料金を下げる努力も欠かせない。シェアード化などによって安価に、そして「お試し」して納得の上で買いたいというニーズにも応えながら民間サービスを普及させ、ギャップシニア市場を拡大していくことが求められる。
 これからの成長には、高齢化を成長の好機として捉え活用することが大きなテーマの一つとなる。ニーズ起点で生活場面に合った商品・サービス開発を推進し、ギャップシニア市場を確実に形成していきたい。それが結果的に社会保障費の抑制にもつながるはずだ。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。