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日本総研ニュースレター 2014年6月号

超高齢化時代に注目されるロコモ対策ビジネス

2014年06月02日 紀伊信之


「ロコモ」の予備軍は国内で約4,700万人も
 今後拡大が見込まれる「元気でもないが、要介護でもない『ギャップシニア層』(先月号のテーマ)」に対する介護保険外のビジネスとして、現在、特に注目を集めるのが、運動器の障害から要介護状態になっている、あるいはそのリスクが高い状態であるロコモティブシンドローム(ロコモ)対策だ。ロコモとは、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、「筋力やバランス能力の低下、骨や間接の病気が原因で介護が必要になる危険性の高い状態」を指す。ロコモに該当する人は予備軍も含めて国内に約4,700万人いるともされ、新たな「国民病」とも言われている。実際、運動器系の疾患(関節疾患、骨折・転倒など)は要支援・要介護の認定要因の第1位であり、脳卒中などの脳血管疾患や認知症を上回る。
 厚生労働省が2013年4月から始まる第二次の「健康日本21」の中でロコモの予防を課題の一つとして取り上げ、認知度向上を目標に掲げたこともあり、全国の自治体では、ロコモ対策の積極的な普及啓蒙活動を始めるようになった。

参入相次ぐロコモ対策ビジネス
 ヘルスケア業界にとって、ロコモは新しい有力な市場だ。ロコモの予防・対策として、筋力の維持・向上や、関節痛の軽減、筋肉や骨の生成を助けるものなど、関連する商品・サービスのすそ野は広い。医薬品(太田胃散など)やサプリメント類(サントリーウェルネスなど)、食品をはじめ、測定器やフィットネス機器・サービスなど、ロコモ対策商品・ビジネスに参入する企業が相次いでいる。既に参入企業は業種の枠を超えて拡がりを見せており、例えば、ロコモ対策をうたった食事や診断、講座などをセットにした観光ツアー(ANAセールスと亀田総合病院のタイアップ)といったユニークな企画なども登場している。
 中でも、やはり運動・フィットネス分野での新サービス開発は盛んだ。特に今後、普及が期待されるのは、高齢者個々人の状況に適切に対応したサービスである。それまでの運動習慣や運動能力、加齢や疾患にともなう痛みの場所・強さなど、若年層に比べて高齢者は個人差が大きいためだ。例えば、兵庫県でフィットネスサービスを運営する「アガーラ」では、提携する整形外科医からの運動療法処方と筋力測定結果等に基づいて、個別の運動メニューを提示する「メディカルフィットネスサービス」を提供している。各自の痛みや筋力にあったフィットネスプログラムを手頃な料金で利用できることが受け、提携病院で関節の手術を受けた高齢者などを中心に利用者を拡大させている。実際、3カ月程度の運動継続で筋力アップや歩行スピードの向上などの効果が見られるという。また、専門家の監修に基づき、タブレット端末に入力された一人ひとりの痛みの箇所や種類、身長・体重、その日の体調などから、個別に最適な運動プログラムを提示するソフトの開発に乗り出す企業(関電アメニックスとコガソフトウェア等の共同開発)も現れている。

認知度の向上と予防法等の普及が鍵
 拡大の兆しを見せるロコモ対策ビジネスだが、課題もある。一つは「ロコモ」自体の認知度の向上だ。日本整形外科学会と博報堂、各種協賛企業で構成される「ロコモチャレンジ!推進協議会」や各自治体では、認知度向上のための活動に力を入れる。しかし、上記の推進協議会が2014年5月に発表した調査結果(※)では、現在の認知度は「言葉は知っていたが、意味はあまり知らなかった」人も含めて約36%に過ぎない状況だ。骨粗しょう症のリスクが高まる50代以上の女性でも認知率は約5割に留まり、今のところ、厚生労働省が掲げる「2020年までに8割の認知度」の目標には遠く及ばない。
 また、ロコモ予防のためには、食生活の改善や、筋力やバランス感覚を維持するためのトレーニングなどが欠かせないが、「散歩・ウォーキングだけでロコモは予防できる」といった程度の理解に留まる場合も多く、言葉の認知以上に、正しい予防法・対策方法の普及啓蒙が必要だ。
 国民の健康はもとより、国民医療費、介護費用の抑制という観点からも、ロコモの対策・予防は今後ますます重要となる。ロコモ対策ビジネス市場の本格的な成長は、医療との適切な連携を含めた、効果を実感できる魅力的な商品・サービスの開発と、消費者への正しい理解の拡大の両輪がうまく機能することにかかっているといえるだろう。

※「2014年度ロコモティブシンドローム生活者意識全国調査」(ロコモチャレンジ!推進協議会)


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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