コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

コンサルティングサービス

理事メッセージ

「女性活躍推進」と国連女子差別撤廃委員会報告

2016年3月30日 足達英一郎


 国連女子差別撤廃委員会の国別所見定期報告が3月7日に発表された。国内では、いわゆる従軍慰安婦問題や皇室典範をめぐる取り扱いがクローズアップされている観があるが、本文全体は14ページからなり、「固定観念と有害慣行」、「女性に対する暴力」、「教育」、「健康」など、わが国の女性に関する広範な社会的課題に言及している。

 見出しの中には「雇用」もある。その内容は、普遍性を前提に女子差別撤廃に取り組む内外の外部専門家の目からみた、日本の「女性活躍の推進を阻むもの」が列挙されており興味深い。また、昨年「女性活躍推進法」が成立したことに触れ、「当委員会はこれを歓迎する」とポジティブな論調を冒頭に置いている。その上で、6つの課題に言及している。

 第一は、男女の給与格差の存在である。格差拡大と、同一労働・同一賃金の原則を強化していく姿勢が必ずしも十分でないとも指摘している。第二は、労働市場において水平的、垂直的な性別職務分離が継続していることが指摘されている。この性別職務分離とは、例えば、学校で教科別に教師の性別に偏りがあること(水平的)、教頭、校長に男性が多いこと(垂直的)を指す。こうした分離が解消されないまま、低給与の職務領域に女性が集中しており、原因の一部は経歴を重視した雇用制度にあると分析している。第三は、家庭での責任を果たすために女性がパートタイム労働に集中する状況が続いていることを挙げている。背景には、妊娠や育児に関連する職場での嫌がらせがあると分析した上で、こうした状況は、女性の年金受給を不利なものとし、退職後の貧困の一因にもなり得ると指摘している。第四は、セクハラに関する禁止措置、制裁措置が十分でないことを指摘している。これに関しては、日本がILO第111号「差別待遇(雇用及び職業)条約」に批准していないこととも関連付けている。第五は、障がい者、出稼ぎ労働者、被差別グループなどに関連して、女性差別が継続して存在していること、最後は、家事労働者の現状に関して政府に情報が不足していることを指摘している。

 このうち、第三の、家庭における役割負担が女性に偏っているとする視点は、特に正鵠を得ているといえるのではないだろうか。委員会は、「男性も育児に均等に参画できるよう、柔軟な勤務形態の活用促進や男女共通の育児休業の導入に関する取り組みを強化すること」「適切な保育施設の供給を確実なものとすること」を勧告した。この部分だけを見るのなら、女子差別撤廃委員会報告は、いまの政府の政策方針を、確実に後押しする原動力になるものだろう。「一斑を以って全豹を卜す」を、ここではあえて自戒としたいと思う。                                                   

働く女性の活躍推進
働く女性の活躍推進
理事メッセージ
調査研究レポート
研究員執筆論文・コラム
お知らせ/セミナー・イベント
メディア掲載・出演

サービスに関する
お問い合わせ