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(1) 生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)の概観

2008年06月02日 古賀啓一


ドイツのボンで5月19日から始まった生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)では、COP10が開催されるまでの二年間の方向性を決定する「ボン指令」の策定に向けて議論が進められた。COP10が開催される2010年は、生物多様性の減少速度を著しく抑制させるとする2010年目標の期限でもあり、目標達成に向けてどういった行動をとるべきか、世界中から関心が集まった。2006年に開かれたCOP8では4,000人だった参加者も、今回は190カ国からジャーナリスト600人を含む6,000人が集まるなど大幅に膨れ上がっており、世界での注目の高さがうかがえる。

COP9開催に先立ち、COP/MOP4においてカルタヘナ議定書について議論が進められた。議論の中心となったのは「責任と救済」についてで、改変された生物の国境を越える移動によって生ずる損害についての責任及び救済を議論している。このテーマは、カルタヘナ議定書の作成当初から大きな議論となったものの、現在まで先送りされてきた経緯がある。途上国を中心に損害に対する厳格な責任と補償を開発国や企業に対して求める声がある一方、日本を含む先進諸国は反対の立場をとり続けてきた。今回の議論を通して、「責任と救済」を法的拘束力のある義務とする方向で参加国の政治的なコミットメントが得られたことは大きな成果だ。

COP9では複数の重点検討項目が設けられており、中でも大きな進展が認められたのは海洋の生物多様性についての議論である。生物の生息状況が比較的把握しやすい陸上と異なり、海洋では生息する生物の科学的知見の蓄積が遅れ、保護区の選定が進んでいなかった。また、海洋で効果的に生物多様性を保全するには、保護区がばらばらに設定されるのではなく、地球規模でネットワーク化されていることが特に重要となる。今回、海洋の保護区選定のための科学的基準が採択されたことで、地球規模の保護区ネットワーク化に必要となる公海での保護区選定に弾みがつくことが期待される。

一方で、今回の会議では十分に議論し尽くされなかった検討項目もある。例えばバイオ燃料に関して、途上国からは食糧安全保障や、遺伝子改変作物の自然への混入という観点からの懸念が表明された。しかし、今回の会議では枠組み作りに向けた実質的な進展は見られなかった。また、林業における遺伝子改変を行った樹木の利用については、各国がリスク分析なしにそれらを利用する権利を持つということで合意に至った。

COP9は終盤の27日から、各国の大臣を含むハイレベル会合を開いた。この際、NGOからは検討項目の進捗状況が発表され、障害となっている国が名指しで公表されている。全日程終了した現在、議長国であるドイツを除くG8すべてがCBDの会議の進展に積極的でなかったと受け止められている。特に日本に対する風当たりは強い。COP/MOP4ではCOP10の名古屋開催に対するネガティブキャンペーンが展開され、このことは日本国内の大手紙でも報道された。結局、2年後のCOP10の開催地は名古屋に決定したが、ホスト国としての日本が途上国やNGOと先進国の対立をどのようにとりまとめていくのか、国内・海外の注目が高まることは間違いない。
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