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BOP市場参入にみる企業の組織イノベーション能力

2009年10月14日 竹林正人


近年、インドのタタモータースによる超低価格車「ナノ」、中国中興通訊の太陽光発電による携帯電話など、途上国の低所得者層を対象とし、その生活改善に寄与するビジネスに注目が集まっています。途上国を中心に、約40億人規模の人口が存在すると言われるこの市場は、所得階層別人口ピラミッドの最底辺に位置することから、ベースオブピラミッド(Base of the Pyramid: BOP)と呼ばれています。欧米多国籍企業や、途上国ベンチャー企業の中から、この市場を狙った新たなビジネスモデル、所謂BOPビジネスの事例が次々と生まれており、新規事業戦略の重点分野に組み込まれることも珍しくありません。他方で日本企業の多くは、BOPビジネスに対し、まだまだ慎重な姿勢を保っているのが現状です。

BOPビジネスがもたらす付加価値は、財務諸表のみで評価が可能な従来型のビジネスモデルのそれとは異なり、より多面的なものです。BOPを競合他社の存在しないブルーオーシャンと捉え参入する企業もあれば、破壊的イノベーションの実験場としての価値を見出す企業もあります。また、純粋にBOPの市場規模に注目して参入する企業もあれば、本業を通じたCSR活動と捉えて利益確保には固執しない企業も存在します。言わば、BOPは大きな可能性を秘めたプレイングフィールドであり、そこで何を実現しようとするのかは、それぞれの企業が持つ事業戦略によるものであると言えます。逆に言えば、BOPに対して明確な事業戦略を有していない企業にとっては、その市場は魅力的でないばかりか、参入リスクというネガティブ要因に目が向いてしまうことになります。

多くの日本企業にとってBOPはまだ見ぬ市場であり、慎重な姿勢で見守っている現状についても、こういった背景に起因するものと考えられます。BOPビジネスにおいて先駆的な取り組みを行っているとされる欧州多国籍企業においても、その多くが同様の問題を初期段階で有していましたが、それを内発的な組織改革で克服してきました。その意味において、BOP市場への参入は製品・サービスのイノベーションのみならず、その企業の組織イノベーション能力をはかる試金石であると言えるでしょう。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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