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桜前線からから考える地球温暖化

2009年04月29日 黒澤仁子


 先日、旭山動物園の館長がテレビ出演されており、GWに旭山動物園は桜の見ごろを迎える旨を話していました。筆者はそれを見て、ふと、「北海道はGWが桜の季節だっただろうか?」と疑問を持ちました。10代を札幌と仙台で過ごした経験から、GW期は東北地方で桜が満開になる記憶があったためです。調べると、やはり今年は桜前線が早く北上し、例年ではGW期に青森県で桜の最盛期を迎えますが、今年は函館で最盛期を迎えるとのことです。また、桜前線の北上化の早まりとともに、沖縄県の梅雨入りも早まる可能性がある(沖縄はここ20年間で4月の日照時間が減少傾向にある)とのことです。

 このような季節の変動は、観光産業とその周辺産業に打撃を与えます。例えば、満開の桜を目的に青森県に来ていた観光客が北海道に移動することによって、青森県のホテル、レジャー施設、土産物屋、外食業等の需要が低下し、さらに、農業、漁業、土産物の製造業等の需要の低下を引き起こす可能性があります。その結果、雇用喪失、まちの衰退等に至る可能性があります。梅雨が早まる沖縄も同様です。また、ヨーロッパでも、降雪量の減少によるスキー産業の衰退等が懸念されています。桜前線の北上化の要因が地球温暖化かどうかについては明確ではありません。しかし、IPCCや各種研究では、地球温暖化がこのような事態を引き起こすと予測しています。

 では、我々は何をすべきなのか。今年4月1日、欧州委員会は、気候変動の影響を緩和するために温室効果ガスの排出削減に取り組む姿勢を示した一方で、気候変動はもはや避けて通ることができない事態であることを示しました。そして、今後は、“レジリエンス”-弾力的に気候変動に対応する力-を強化することが必要であるとし、それに関する白書“White paper-Adapting to climate change”を公表しました。そこには、EU、各国政府、企業、自治体が一体となって対応しなくてはならない旨が記載されています。

 現在、日本では温室効果ガス削減の中期目標に関する検討が行われています。温室効果ガスを減少させることは非常に重要であり、日本国内、そして世界が足並みをそろえて削減する方針に向うこと期待します。しかし一方で、たとえ環境に配慮した社会であっても、おおよそ2020年には渇水や季節の変動等の物理的な変化が現れ始めるとしているIPCCの研究等を踏まえると、政府、自治体、企業、そして個人は、気候変動に弾力的に対応することについても真剣に考え、取り組まなくてはならないといえるでしょう。
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