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「80%以上削減」で鍵を握る公の役割

2009年08月11日 石田直美



ラクイラサミットで、G8首脳は「先進国全体で温室効果ガスの排出量を80%以上削減」で合意した。新興国との合意はできなかったとはいえ、今年末のCOP15に向け、大きな弾みとなったのは間違いない。
それでは、どのようにして80%もの大幅削減を達成していくのか。各セクターで検討が進んでいるが、特に注目したいのが運輸部門である。わが国の場合、運輸部門からのCO2排出量は全体の2割を占め、削減が順調に進んでいないためである。

運輸部門からのCO2排出量を下げるには、モーダルシフト、つまりCO2排出量のより低い鉄道や内航の利用度をあげていくことが必要である。先進的企業は、職員のマイカー通勤を制限してバスを走らせたり、物流でのモーダルシフトを進めたりしている。また、バス事業者は、利便性を高めるため運航の正確化に取り組み成果を挙げている。

しかし、抜本的にCO2を削減するに際して、各企業が個別に努力しているのでは限界がある。例えば鉄道貨物輸送を担うJR貨物には、鉄道を利用したいという企業が多いのに荷物の引き受けが難しい状態が発生している。軌道の余裕がないことがボトルネックとなっているのだ。これを解決するためには、需要が大きい路線の軌道増強を図る必要があるが、多額の費用がかかり、回収も長期にわたるため、民間企業単独では難しい。そもそもJR貨物が軌道整備をすることは想定されておらず、このままでは荷主やJR貨物が努力しても、鉄道貨物輸送は伸びない可能性が高い。

バス事業者やフェリー会社も多くが赤字経営に苦しんでいる。経営努力による改善も必要だが、民間事業としてそもそも成り立たないという場合も多い。公的支援を増やしていく必要があるが、地域内交通を維持すべき地方公共団体の財政上の問題から及び腰なのが実情である。
運輸部門のCO2削減には、各事業者の努力に加えて、公共の役割拡大や、支援が求められる。今こそそのビジョンを作るべきときである。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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