コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

Sohatsu Eyes

エコは“付加価値”から“当たり前”に

2009年05月26日 井上真壮



昨年からの急速な経済不況の中で環境ビジネスへの期待感が高まっています。米国のグリーンニューディールを始め、日本国内でも低迷する経済の立直しのキーワードは“エコ”です。もともとIT産業に次ぐ成長産業はクリーンテックと言われていましたから、これは何も新しい話ではないように思います。しかし、最近の動向を見ていると、その扱いは以前とは異なっています。というのも、環境やエコはもはや“付加価値”ではなく“前提”となっているからです。

最も象徴的なのは自動車産業です。今年の2月にホンダはハイブリッド自動車のインサイトについてこれまでの常識を打ち破る低価格で市場投入しました。トヨタのプリウスも価格を見直し、これに続きました。この2車種は低迷する自動車販売市場の中で最も売れる車の一つであり、こうした低燃費車両でなければ市場で売れないのは常識になりつつあります。急速に縮小する市場規模を維持するために、既存車種と同価格水準で低燃費・高性能を達成しなくてはなりません。同様なことは全ての産業で起きつつあります。例えば、住宅販売の場においても太陽光発電、省エネ性能が宣伝文句として謳われていますが、増大する設備負担を販売価格にそのまま付加することはできません。

当然のことながら、エコにはお金がかかります。企業努力だけで埋められない価格差は様々な形でバックアップされます。例えば、エコカーへの減税、省エネ家電へのエコポイントなどです。また、国内外における排出権取引やグリーン電力証書など環境価値もその一助となり得ます。ただし、その経済的価値は非常に微々たるもので、エコにかかる経済的負担を賄うには十分ではありません。

一方、政府は2020年までの温室効果ガス排出削減の中期目標として6つの選択肢を示し、検討しています。意欲的な目標数字もあれば、現実的な数字もあります。実現性や諸外国との比較も含めて議論されています。ここでどの目標を選択すべきなのか。市場の要求よりも政策的な目標が低ければその目標は意味をなさないのではないでしょうか。環境ビジネスは新たな市場でもありますが、今求められているのは本業のエコ化、グリーン化です。企業にとっては非常に厳しい時期を迎えている一方で、急速な変革タイミングというのは一早く対応した企業にとって大きなビジネスチャンスとなる可能性も秘めています。政策目標は、長期的な企業戦略を立てる上で有益な材料となり、環境対策と経済成長の両立を先導すべきと考えます。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ