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Sohatsu Eyes

世界中で注目されるバイオガス利用

2009年04月21日 赤石和幸


先月、石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律(代エネ法)の改正案が国会に上程されました。国は、代エネ法に基づき石油代替エネルギーとして太陽エネルギー、風力発電、廃棄物発電、バイオマスエネルギーなどを2010年度に7.60%活用する目標を掲げています。代エネ法の改正案では、これまで購入義務が課せられていなかった都市ガス会社にも再生可能エネルギー利用の一定量の義務付けがなされる見込みです。これまで、電力会社は新エネルギー利用特別措置法(RPS法)に基づき1.38%の再生可能エネルギーの買取義務を負っていました。石油業界もまた、3%のバイオ燃料(E3やETBE;エチルターシャリーブチルエーテル)の利用促進をしています。これらの流れが都市ガス業界にも波及したと考えられています。

都市ガス会社が、再生可能エネルギーの購入義務をどの程度負うかは夏ごろにならないと明らかにされないのですが、仮に販売量の1%が義務化された場合、年間で約3億立方メートル(2007年度の一般ガス事業者の年間ガス販売量は約358億万立方メートル)が再生可能エネルギー転換される計算です。都市ガス1立方メートルを80円で販売した場合、約240億円の供給ポテンシャルになる計算です。都市ガス会社が取り扱う再生可能エネルギーの中で有望視されているのは、下水処理場、ごみ処理場、家畜排泄物などから発生するバイオガスです。これまでバイオガスは、都市ガスの主原料であるメタンガスを多く含む(約60%程度)ものの硫化水素や二酸化炭素との混合ガスであるため、燃料としての価値は低く、ボイラーなどでの利用に限定されていました。しかし、昨今のテクノロジーの進展により、バイオガスから高純度のメタンガスを精製・回収できるようになり、天然ガス自動車燃料や都市ガスの導管を使った供給など様々な用途が見えてきました。

諸外国に視野を転じると、ドイツ連邦政府が2030年までに都市ガスに占めるバイオガスの割合を10%まで高める(2008年度は約3%)ことを表明したことに続き、スウェーデンでも、2010年までにバイオガスを供給できるスタンドを500ヶ所にし、70,000台以上のバイオガス自動車を走らせると計画しています。ノルウェー、英国、イタリアでも複数のバイオガスプロジェクトが立ち上がっていると聞きます。最近、「グリーンニューディール」政策で注目を浴びているアメリカでも、今年からEPA(米国連邦環境保護局)が主体的になり、CO2換算で年間1.8億トン以上(2007年のCO2排出量が55億トンであるので約3%の削減量)のメタンガスの回収プロジェクトが始動しつつあります。

日本には、前述のバイオガスを精製し、高純度なメタンガスを回収する技術や軽量でかつ効率的にガスを輸送する技術などが存在します。兼松株式会社や当社などが出資する合同会社バイオガス・ネット・ジャパンでも、これら技術をテコにして、日本各地での天然ガス自動車へのバイオガス供給、都市ガス導管への接続などの事業化の検討を進めています。日本は規制が厳しく、安全面などの対応コストがかさむものの、世界的に見て技術的にも信頼性あるシステムが作り上げられる素地があると言えます。日本で技術やシステムを実証し、世界で戦えるコスト削減ができれば、世界中どこでも導入することができます。中国などの景気浮揚に伴い、原油などの化石燃料も高騰傾向にあります。2030年までに原油1バレル200ドルに達するという見通しもあります。バイオガスの事業化の動きはまだまだ黎明期ですが、今後の資源枯渇の動きを受け、日本で培った技術やビジネスモデルが世界で陽の目を見る日も近いかもしれません。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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