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コラム「研究員のココロ」

ブランド戦略を考える
~経営改革ワンポイントアドバイスシリーズ(No.10)~

2005年04月11日 宮地恵美子


経営改革クラスターが携わったコンサルティング事例から、課題解決に効果が高かった視点・手法を、ワンポイントアドバイスの形でご紹介しております。詳細については、クラスターに直接お問合せください。


ブランドとは

 ブランドというと、イメージ戦略という考え方を持つ方もいまだにいるのではないかと思う。ブランドという言葉は、かつて牛を放牧していた牧童が、自分の牛を取り違えないようにしていた「焼き印を押すこと=burned」から派生したといわれている。つまり、AというものとBというものとは誰が見ても明確に違うということをはっきりさせること、といえる。
 焼き印に象徴されるように、他と区別するには“ロゴマーク”や”名称“という単純なものでの識別がブランド戦略の重要な項目となる。ただ、それゆえロゴマークがすなわちブランドと思われてしまう傾向もある。


企業にとってのブランドと消費者にとってのブランド

 これまで多くの企業に対してコンサルティングを行ってきたが、企業にとってのブランドと消費者にとってのブランドは、出発点が異なることを理解していない企業が多いと感じる。それが、ブランド戦略がうまくいかない大きな理由となっているように思う。
 消費者にとっては、企業、あるいは商品・サービスに対して、認知することがブランドの出発点になる。消費者にとってのファーストコンタクトの多くは、一般にロゴマークや名称を見聞きすることであるから当然である。一方、企業にとってのブランド戦略の出発点は、ロゴマークや名称についてアイデア出しをすることではない。企業であればビジョンや戦略、商品・サービスであればコンセプト・ターゲット・顧客価値などを整理し、最も訴求すべき要素を明確にしていく作業が、企業にとっての出発点とならなければならない。
 しかし、ブランドを戦略的に位置づけ考えている一部の企業を除き、ロゴマークや名称を考えるにあたって、ターゲット顧客に与える価値や効果を明確化している場合は多くない。きれいにデザインされたロゴマークは出来ても、それが結果(売上・利益)につながることは少ないのは、そこにあると思っている。


ブランド認知のための活動は「繰り返し」の活動が必要

 ブランドの認知は消費者にとってのそのブランドとの付き合いのスタートである。そのため、どんな企業であってもまずブランドを認知してもらうための活動が、消費者に対するブランド戦略活動のスタートとなる。
 広告費をかけることの出来ない中小企業の場合は、マス広告を使うことは難しいということから、どうしてもチラシやDMなどの媒体により具体的な商品説明をすることが中心となる。しかしこの方法ではブランド認知はできず、差別化も出来ないため、効果があがることは少ない。
 一方、企業規模は小さかったにもかかわらず、マス広告を多用し、近年大きく成長している企業もある。例えば、健康酢で伸びている「やずや」という企業の場合、徹底的なCM戦略で企業名を繰り返し伝え、ここ数年で飛躍的に業績が伸びている。
 必ずしも、CMなどのマス広告がブランド認知に必須であるというわけではなく、ここで指摘したいのは、「やずや」の成功のポイントは消費者に対して何を訴求すべきかを明確にしている点である。つまり、「企業名」と「健康によいお酢」の2点を徹底的にしつこく繰り返したことである。
 この「繰り返す」ということはブランド認知のために非常に重要なことである。しかし特に企業規模が小さい場合には、伝えたいことは山ほどあるが広告費が限られているため、一般的にはどうしても同じことを繰り返し続けられず、散漫とした情報のみしか提供できず、結果として消費者にはメッセージは伝わらないことになってしまっている。ブランド認知の度合いを高めたければ、非常に勇気のいることであるが、到達したいターゲットに適した媒体を利用し、徹底的に同じことを繰り返し継続することを試みて頂きたいと思う。


ブランド認知からブランド想起、さらに継続した評価を得ること

 一度そのブランドを認知してもらった消費者に対しては、さらにその消費者が商品・サービスを選ぶ段階で、そのブランドを想起してもらうことが必要である。その段階になっている消費者に対しては、ブランド名連呼的な活動では当然不十分である。ここで、初めて詳しい商品・サービスの説明やそれを購入することによって得られる価値を具体的に説明することが必要になる。
 しかし、いくらブランド認知を高めブランド想起が出来るほどになっても、予め抱いたイメージと、実際に対価を払った結果とのギャップが大きい場合には、状況は悲惨になる。
 最近私自身が利用した外資系ホテルがある。このホテルは日本ではとても評価が高く、日本のホテルを実際利用した際には全く不満はなかった。ところが、海外にある同系列のホテルに宿泊した際は、これが同じホテルグループとはとても思えないような残念な経験をした。当然自分にとってブランドイメージが大きく下がってしまったのであるが、このように一度高評価を得た後でも、継続して同じ評価がされるように気を配ることは、ブランド戦略で大切なことである。


終わりに

 ブランド戦略を考える中で、イメージは重要である。しかし、ブランド戦略におけるイメージとは企業あるいは商品・サービスが目指すものが何であるかをわかりやすく表現したものであり、ブランドはそれらイメージの総合体であると捉える必要がある。そのため、企業が目指すイメージと実際に消費者が持っているイメージとの間にどの程度ギャップがあるかを確認することが重要である。ブランド戦略を考えるにあたっては、消費者調査を行い、ブランドイメージについての調査を行うが、単に消費者が持っているイメージをチェックするのではなく、あらかじめ目指すべきイメージを明確にし、その仮説とのギャップを確認する、という流れで行うことが効果的である。
 この作業にあたっては、おそらくかなりの企業がまず「仮説」から考えこんでしまうことになると思う。しかし、その仮説設定作業がブランド戦略の大変重要な部分である。ここでじっくり取り組むことが、ブランド戦略を効果的に進めることにつながっていくはずと考えている。
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