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コラム「研究員のココロ」

心に残るお客様の声

2005年01月11日 荒木栄


 人事コンサルタントの一員として日々お客様と打ち合わせをさせていただいておりますが、やはり皆さんの一番の関心事は人事考課制度のようです。
「どんな基準で評価されるのか」、「昇給・賞与にどのように反映されるのか」というような不安の声はいつもお聞きします。それに対して、出来るだけ仕事の実態を踏まえた精緻な考課基準を設計したり、考課結果にそれなりのメリハリをつけるような昇給賞与のメカニズムを設計したりと努力しておりますが、何年か前からお客様の声をきっかけとして徐々にわかってきた大切なこともあります。このうち二つをご紹介します。

 ひとつは、こと人事考課制度に関して言えば、制度を緻密に設計することと納得性の間にはある程度まで比例関係が見られるが、緻密さも度を超すと「わかりにくい」「手間がかがる」「私の仕事にはあっていない」というような不満の声も増大し、全体としてはかえって納得性が低下するということです。ですからコンサルタントとしてお客様が必要とされる以上に複雑怪奇(?)な制度を設計して「ええかっこ」しないこと、お客様、とくに管理職の皆さんのマネジメントレベルになじみやすい制度を設計すること、同時にマネジメントレベルを上げるための啓蒙活動にさらにエネルギーを投入することがとても大切です。
 実際にこんな声をよく聞きます。「人事考課表はいいものが出来たと思います。でもあの人が考課するなら考課されるのはいやです」

 いまひとつは、ある病院でのヒアリングがきっかけでした。40歳代半ばの内科の部長先生がおっしゃったのです。「受け持ちの患者で重篤な方がおれば、朝7時から病室を訪ねます。また、急患で夜中に駆けつけることもあります。同僚は、自分にはそんな能力がないといって白旗を揚げましたからこんな苦労はしていませんが、昇給・賞与額は同じです。もっときちんと評価してください」。もっと詳しくお聞きするとこういうことです。「自分の方が同僚よりたくさんの賞与が欲しいといっているのではない。頼むからがんばっているということを評価してもらえる制度をつくって欲しい」。
 ここで「評価」とおっしゃっているのは、査定を受けるという意味ではなく、評価本来の意味としての「ほめる。一目置く」という意味だったのです(もちろん、患者様やご家族からは感謝されておられるでしょうが、ここでは勤務医として病院の幹部からほめられたいということです)。これは制度の設計だけで解決できる問題ではありません。
 大病院の部長医師のステイタスや年収の高さを思い浮かべますと、それだから格差よりほめられたい、とおっしゃるのだという見方もあるかも知れません。しかし、そのような贅沢な悩みという雰囲気ではありませんでした。この声を聞いてから私は、お客様での社員説明会などでご説明する人事制度改革の目的を「評価してもらえる組織風土作り」というようにしていますし、管理職の皆さんには「評価してあげてください」とお願いしております。

 以前ある上場企業でこのようなことを申し上げましたら社長様がそのとおりだ、とご賛同下さいましたが、そのあとおっしゃいました。「うちの会長など、ほめるどころか、わしの20年前の失敗をいまだに怒るんですぞ」。
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