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Business & Economic Review 2009年3月号

【REPORT】
ポスト京都に向けて日本独自の排出量取引を

2009年02月25日 創発戦略センター 副主任研究員 長谷直子


要約
  1. 2008年から京都議定書の第1約束期間がスタートした。この約束に基づき、先進国全体の温室効果ガス排出量を1990年対比5%削減しなければならない。京都議定書の最大の意義は、法的拘束力のある温室効果ガス絶対量の削減を義務付けたことである。しかし、設定された削減目標は大きな値ではないうえ、途上国に削減義務が課されていないため、地球温暖化を抑制するという観点からは必ずしも実効性が高いとは言えない。京都議定書をスタート台として評価はできるものの、地球温暖化の抑制には、今後、世界各国が協調して大幅な排出削減に取り組むことが求められる。

  2. 2013年以降の温室効果ガス削減に向けたいわゆるポスト京都の枠組みについては、京都議定書の附属書I国締約国によるAWG(アドホック・ワーキング・グループ)や、COP/MOP(Conference of the Parties/Meeting of the Parties)などの場で国際的な協議が始められており、京都議定書から離脱したアメリカや途上国の参加、各国の数値目標をどう設定するかなどが焦点となっている。一方、昨年7月に開催された洞爺湖サミットでは、G8各国で、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を少なくとも50%削減する目標についてUNFCCC(国連気候変動枠組条約)の全締約国の採択を求めること、各国がさらに野心的な中期の国別総量目標を設定することが合意されている。「2050年までに半減」が世界のコンセンサスになると、2013年以降の削減目標は、第1約束期間よりもはるかに厳しいものにならざるを得ない。

  3. 日本でも、福田前内閣総理大臣が政府の温暖化対策に関する指針「福田ビジョン」を発表し、2050年までの長期削減目標として、国内の温室効果ガス排出量を現状から60〜80%削減する方針を示した。しかしながら、我が国の排出量の実績を見ると、2007年度速報値は基準年(90年)比8.7%増、前年度比2.3%増となっており、京都議定書の6%削減目標すら達成が容易ではない状況にある。環境省はこの原因として、新潟県中越沖地震の影響により原子力発電所の稼働率が低下したことを挙げているが、原子力発電所の利用率が長期停止の影響を受けていない時の水準(98年度の実績値)にあったとしても、2007年度の温室効果ガスの総排出量は前年度比0.5%増となる。これまで新エネルギーの利用促進や省エネルギー対策の推進などの施策に取り組んできたものの、排出量を減少傾向に転じさせるには至っていないのである。抜本的な対策がなされないと、日本は、ポスト京都に向けた国際的な流れについていけなくなる恐れもある。
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