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Business & Economic Review 2008年09月号日本総合研究所 シンポジウム

【新しい国のかたち-連邦型地域主権国家の創造】
農業再生なくして地域再生なし

2008年08月25日 創発戦略センター 副主任研究員 三輪泰史


要約

  1. 地方では域内総生産に占める農業生産の割合が高く、他産業との連携による波及効果を含め、農業は重要な産業の軸となっている。工業やサービス業の誘致に不向きな地域の再生策として、地域の基幹産業である農業の再生がいっそう重要となっている。

  2. 現在、日本の農業は危機的な状況に瀕しており、農業の担い手不足は深刻である。農業の衰退により、1960年代前半には80%近くであった食料自給率は年々低下しており、現在は40%を切る状況にある。これは他の先進諸国と比べても著しく低い値である。また、女性の就業率の高まりに伴い、食の外部化が進展したうえ、外食産業がコスト重視の調達を行ってきたことで、輸入農産物に大きくシェアを奪われた。一方で、近年、輸入農産物の安全性の問題等を受け、消費者の食の安心・安全に対する意識が急速に高まっており、国産の農産物が見直されている。

  3. 国内の農業の再生を阻む要因のひとつとして、農協を中心とした既存の農産物流通ルートの弊害が挙げられる。既存の流通ルートは、中間マージンの高さ、消費者ニーズの分断、販売ルートの画一性といった問題を抱えており、特色ある農産物生産や生産者(農家)の創意工夫を阻害してきた。

  4. 一方、近年農産物直売所の価値が改めて評価されている。直売所では中間マージンを低減できるだけでなく、販売データや消費者との対話を通して、消費者ニーズを的確に把握することが可能となる。
    直売所のシェアは微々たるものであるが、生産者と消費者を直結する流通(農産物ダイレクト流通)により農業を魅力あるビジネスへと変革させるトリガーとなる可能性を秘めている。結果として、魅力ある市場が生まれ、意欲ある事業者が参入し、農業再生へとつながっていくと考えられる。

  5. 農産物ダイレクト流通を通した農業再生には、価格支持やインフラ整備に偏重した、全国画一的な農業政策を改めることが求められる。また、農協経中心の補助金交付や独占禁止法の一部適応除外など、既存の流通ルートに対する過剰な優遇措置の見直しも不可欠である。農業は地域性と密接に関係していることから、地方の主体性に基づく農業政策が重要である。
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