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Business & Economic Review 2006年12月号

【FORECAST】
わが国自動車産業の市場動向展望-国内の少子高齢化、海外需要を織り込んだ試算

2006年11月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 主任研究員 枩村秀樹


要約

  1. 自動車産業は、わが国経済において大きなシェアを占めており、その生産動向はわが国景気を左右する一因になっている。足元の国内需要をみると、2000年以降は高い水準を維持しているものの、今後は人口減少というマイナス要因が存在している。一方、外需は2002年以降増勢が続いているものの、その持続性については不透明である。そこで、本稿では、国内・海外需要に分けた分析をもとに、中期的な自動車産業の市場動向を展望した。

  2. まず、国内需要は、懸念が強まっている人口動態の影響に焦点を当てて新車購入台数を試算すると、2005年をピークに減少傾向に転じる見通しである。これは、自動車購入意欲が強い若年層の世帯数が減少する一方、急増する高齢者世帯では購入意欲が弱いことが主因である。もっとも、a.新車購入台数が急激に落ち込む事態には至らず、減少ペースは年平均▲0.7%程度と緩やか、b.高付加価値化・所得増などを通じて1台当たりの購入金額を引き上げることが可能、などを勘案すれば、金額ベースの市場規模は現在の水準で維持される見通しである。一方、車種構造は、少子高齢化の進行によって大きく変化すると見込まれる。1,500cc以下の需要は堅調を維持するものの、1,501~3,000ccの需要の落ち込みが相対的に大きくなる公算が大きい。

  3. 次に、海外需要は、海外経済の高い成長が期待できるため、引き続き増勢を維持する見通しである。とりわけ、2002年以降の輸出の増勢拡大の原因として注目されるのは、アジア、中東、ロシア、中南米など開発途上国向け輸出の寄与度が高まった点である。今後を展望しても、従来の欧米向け輸出に加えて、開発途上国の高成長持続を背景に、同地域向け輸出の牽引力も一段と強まることから、自動車輸出の高い伸びが期待できる。輸出向けの車種構成も、開発途上国向けのシェア拡大によって多様化していくと見込まれる。

  4. 以上をまとめると、今後の自動車産業は、a.市場規模が拡大傾向を続ける一方、b.外需への依存度が一段と強まる、c.国内・海外市場ともに車種構成が大きく変化していく、といった市場動向が展望できる。わが国の自動車産業がこうした変化に対応し、競争力を強めていくためには、製品の高付加価値化、内外での生産体制の再構築などに取り組むことが一層重要になる。
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