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RIM 環太平洋ビジネス情報 2005年04月号Vol.5 No.17

対立と協調の中の日中関係

2005年04月01日 調査部 環太平洋戦略研究センター 佐野淳也


要約

  1. 現在の日中関係を概観すると、経済関係では、貿易や直接投資の拡大に伴って急速に緊密化する一方、政治的関係は、首脳による相手国への公式訪問が2001年以降途絶えているなど、決して芳しくない。双方の政治家が国内世論への配慮もあって、強硬姿勢を前面に押し出すようになり、相手側も冷静な対処ではなく、過敏な反応あるいは強面の姿勢で応じることにより、相互に反発や不信感が高まっている。

  2. 庶民感情をみると、日本人の対中親近感は過去最悪の水準に低下した(2004年内閣府世論調査)。サッカーアジアカップにおける一部中国人サポーターの振る舞いなどが日本人の対中親近感を著しく低下させたとみられる。他方、中国側の世論調査からは、庶民の間での日本に対する反発や嫌悪感の根強さがうかがえる。中国との戦争を美化・正当化する言動、戦後処理に関する問題が、対日感情を厳しいものにしている。

  3. 中国が対日関係において歴史認識の問題を重要視し、日本への強硬姿勢をとり続けている背景として、日本側の対応に加え、a.愛国主義教育、b.民意重視という国内向け政策が指摘出来る。政権の正統性を高めるための措置などに阻まれながらも、中国の指導部は対日関係が決定的な対立に陥らないようにするための外交的取り組みを何度か実施している。

  4. 2002年以降、中国の政策形成に参画する知識人や研究者の間から、対日外交方針や手法を見直し、日本との連携を強化すべきとの主張が現れるようになった。ただし、こうした「対日新思考」は広範な支持を得られていない。a.日本側の言動に伴う説得力の低下、b.庶民の不満のはけ口としての日本という2点が支持を得られない主な理由としてあげられる。

  5. 日本、中国いずれの側にも相手国との関係改善を通じて得られるメリットが存在する。期待されるメリットは、経済成長や安全保障の確保など、複数あるため、日中関係を改善させる原動力となり得る。

  6. 日中関係を改善させ、両国が東アジア地域の連携強化に協調して取り組むためには、共通利益の創出と拡大を図らなくてはならない。双方向の経済連携の強化、エネルギー面での協力拡大、「ポップカルチャー」をはじめとする幅広い分野での文化交流などが具体策としてあげられる。既に鋭く対立し、双方の不信感が増幅している分野については、問題の解決に直接結びつく案は容易には見つけられない。公的会合において、双方が忌憚なく意見を述べ合い、主要な相違を相互に確認することが相互の不信感を緩和し、関係悪化を回避出来る唯一の方策であろう。
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