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RIM 環太平洋ビジネス情報 2005年01月号Vol.5 No.16

韓国の産業構造と対日貿易赤字-スカイラインマップからみえるもの

2005年01月01日 向山英彦


要約

  1. 韓国では輸出が好調に推移しているのに対して内需の低迷が続いているため、「経済の二極化」が指摘されている。内需の拡大が進まない主な要因としては、家計債務の増加が民間消費の回復を阻害していることと、輸出の国内への生産波及効果が小さくなっていることが考えられる。

  2. 輸出の国内への生産波及効果が小さくなっている要因は、基幹部品や先端機械設備の対日依存が強まり、輸出の拡大によって誘発された需要が日本に流出していることがある。

  3. 2003年の日本の韓国への主要輸出品目をみると、電子部品(全体の12.8%)、鉄鋼(10.4%)、IC(9.4%)、科学光学機器(6.9%)、有機化合物(4.5%)、プラスチック(3.7%)、金属加工機械(2.9%)、など生産財が上位を占める。

  4. 1990年と2000年の産業連関表を比較すると、韓国における中間財の投入率は1990年が57.2%、2000年が57.0%とほとんど変化しなかったが、国産財の投入率が90年の46.5%から2000年に43.8%に低下した一方、輸入財は10.8%から13.1%と上昇したことが明らかになった。28部門の統合表(2000年)で輸入財投入率の高い部門(製造業のみ)をあげると、a.石油・石炭製品、b.電気機械、c.紙・木製品、d.金属製品、e.化学製品となる。

  5. 同じく28部門の統合表で、他部門への生産波及効果を示す影響力係数を算出すると、上位は、a.輸送機械(1.271)、b.出版・印刷物(1.201)、c.基礎金属製品(1.180)、d.金属製品(1.158)、e.一般機械(1.152)となる。電気機械は16位の0.922で、1990年の1.043から低下した。電気機械は韓国最大の輸出産業であるため、同部門の影響力係数の低下は、輸出の国内生産への波及効果を低下させた一因といえる。

  6. 機械産業について詳しくみるために、77部門の統合表(2000年)で造船を除く機械産業に属する10部門を選び、そのスカイラインマップを作成すると、精密機械部門と特殊産業用機械部門の自給率が低いことが明らかになる。これが日本との最大の違いであり、輸出産業の高度化に国内の機械産業が追いついていないことを示すものである。

  7. 基幹部品や機械産業の発達が遅れているのは、脆弱な技術構造に起因する。韓国政府は対日依存を減らすため、国内の技術基盤を強化するとともに、日本企業との技術協力や日本企業の誘致などを積極的に図っているが、効果が表れるまでには至っていない。

  8. 現在、日本と韓国との間で自由貿易協定(FTA)の締結に向けた交渉が行われている。FTAの締結は長期的には韓国にプラスとなるが、短期的には対日貿易収支を悪化させると予想される。したがって、今後の課題は長期的な効果をいかにスムーズに実現させるかであり、そのためには産業内分業を促進する環境を整備することが重要である。
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