要約
- 2000年人口センサスによると、戸籍地と現住所が異なる人は1億4,439万748人であった。その内、70.6%に相当する1億197万2,186人は省内の移動であり、残りの29.4%、4,241万8,562人が省を越えた移動(省間移動)である。
- 各省ごとの省間移動をみると、広東が省間流入人口で最大の規模であった。浙江、上海、江蘇、北京がそれに続く。流入人口の規模は総じて海に面した東部の省で大きく、西部の省で小さいという傾向が指摘出来る。流出人口では、四川が最も多く、安徽、湖南、江西、河南が続く。西部に位置する四川を除く上位の4省は中部に属しており、経済発展が遅れた西部からの流出人口が必ずしも多くなかった点は注目される。
- 省間移動の特徴として、吉林・黒龍江から遼寧、河北から北京・天津といった近隣の豊かな省へ流出する傾向が強くみられる。ただし、四川や重慶などにおいては、近隣ではない広東への流出人口が最も多かった。省間移動における大きな流れとして、a.広東への近隣および四川など隣接していない省からの流入、b.安徽から江蘇・浙江、江蘇・浙江+安徽から上海へという長江下流域を中心に展開された西から東へ向かう流れが指摘出来る。
- 全人口に占める省間移動人口比率(3.6%)を基準に、各省の流入人口比率と流出人口比率の水準を4分類すると、流出人口比率が高く、流入人口比率が低いグループには、中部の江西や安徽などの省が西部の省よりも上位に並ぶ傾向がみられる。中部に限定すれば、所得の低さが人口移動のプッシュ要因となっているといえよう。半面、西部の省は、所得水準があまり高くないものの、四川や広西を除けば流出人口比率は決して高くなく、流出は緩慢である。
- 純流入者がマイナスの省は所得が少なく、純流入者がプラスの省は所得が多いという傾向が改めて確認できた。ただし、広東、北京、上海の所得と流入状況を踏まえると、所得の高さが人口移動の唯一のプル要因とはいえない。
- 1949年から現在までの人口移動に関する制度的変遷をみると、全面的ではないものの、徐々に緩和されつつある。胡錦濤指導部にとって、「合理的、秩序ある」人口あるいは労働力の移動は、移動自体の活発化などに伴い、制御が今後一層困難な課題となろう。