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Business & Economic Review 2005年12月号

【REPORT】
クレジットカード市場を取り巻くマクロ環境変化とその影響

2005年11月25日 調査部 金融ビジネス調査グループ 研究員 藤山光雄


要約
  1. わが国のクレジットカード市場は堅調に拡大を続けている。そこで、今後のクレジットカード市場の成長に影響を与えると考えられる、a.経済環境の変化、b.消費者の変化、c.法制度の変化、の三つのマクロ環境の変化について、具体的にクレジットカード市場にどのような影響がもたらされるのかを考察した。

  2. 日本経済は近くデフレから脱却し、超低金利時代が終焉すると考えられる。金利の上昇は、a.クレジットカード会社の資金調達コストの上昇、b.クレジットカード会員のフロート・ベネフィットの拡大、c.加盟店のクレジットカード利用代金の早期回収ニーズの高まり、をもたらす。また、経済環境の回復に伴い、今後雇用者所得や個人消費の増加が予想されるものの、それらの増加幅はクレジットカード市場を拡大させるほどの大きさにはならず、クレジットカード会社は従来と同様に、限られた消費支出のなかで、いかに決済手段としてクレジットカードの利用割合を高めていくかが重要となる。

  3. 今後、消費者の変化として、a.人口の減少と少子高齢化、b.個人間の所得格差や、各個人の所得の変動幅の拡大、c.「借金は悪」と捉える国民性や消費に対する意識の変化、d.個人破産の増加、が予想される。このような変化に対しては、団塊の世代を中心とした旺盛な消費意欲を持つ高齢者層の取り込み、信用リスクの高い消費者に対する適切な対応など、クレジットカード会社が取り組むべき課題は多い。

  4. クレジットカード市場に大きな影響を与えるであろう法制度の変化として、金利規制に関する法制(出資法、利息制限法)の変化、新規参入に関する法制(郵政民営化法、会社法)の変化がある。これらの法制度の変化による具体的な影響としては、キャッシング金利の上限変更による収益の圧迫、巨大金融機関となる郵便貯金会社のクレジットカード業務への本格参入、三角合併を通じた外国企業の参入、などが指摘できる。

  5. 以上を要するに、クレジットカード市場の潜在的な需要を左右する人口や消費の大きな伸びが期待できないなかで、世代別人口構成の変化や借財を伴う消費意欲の高まりを通じて、クレジットカード会社の市場環境が大きく変化することが予想される。また、金利規制や新規参入企業の動向など、クレジットカード会社自体の競争環境の変化も予想される。こうした環境変化のなかで、クレジットカード市場が今後も成長するためには、a.消費者・顧客の年齢構成変化への対応、b.信用リスクの拡大への対応、が重要な経営課題となると思われる。
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