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RIM 環太平洋ビジネス情報 2006年05月号Vol.6 No.21

成長持続のために推進される政治改革

2006年05月01日 調査部 環太平洋戦略研究センター 佐野淳也


要約


2005年10月に発表された『中国の民主政治建設』白書は、「共産党の指導」とその必要性を繰り返し強調する一方、経済成長や発展を持続させるための手段としての政治改革の推進を表明している。

その文言は、現行制度の正当性を声高に主張し、その維持にあくまで固執する側面が顕著にみられるものの、政治改革を漸進的に進めていく意思も示している。これらは、胡錦濤政権の政治改革に対する基本方針といえよう。
胡錦濤政権発足から今日までの間に、政治改革でも一定の進展がみられた。監督機能強化や政権維持に関する危機意識の共有は、その具体的な事例としてあげられる。半面、情報公開およびその一環としての報道規制の緩和については、当初は積極的に取り組んでいたものの、最近では報道機関への規制を再び強化するようになった。

こうした政治改革に取り組む背景として、政治システムの中で国民の要求や利益が十分反映されていない現状があげられる。都市と農村との経済格差は拡大を続けるとともに、経済発展の恩恵から取り残され、絶対的貧困層に該当する農民が依然として2,000万人強存在する。急速な開発の進展に伴い土地を失う農民の増加、出稼ぎ農民をめぐる問題も根源をたどれば、幹部の汚職の蔓延などによる負担増という政治問題に帰着する。相対的に恵まれた都市部でさえも、所得や財産面での格差が拡大し、一部住民の要求や利益の実現が優先され、残りの人々については後回しにされている。

10年程度の期間を想定すると、胡錦濤総書記を中心とする指導部から若手の「第五世代」指導部への権力移行が視野に入ってくる。今後の中国政治を展望した場合、経済成長などの実績を背景とする胡錦濤政権の強固な支持基盤が安定要因として指摘され、現行体制の崩壊にまで至る可能性は小さいと判断される。とはいえ、改革を怠れば、安定要因がはく落した際に、政治的なリスクが急速に高まりかねない。腐敗行為を監視する機関の権限と地位向上、社会的弱者の利益を政治に反映させるための直接選挙の段階的導入など、経済成長の持続にも寄与する政治改革の推進が胡錦濤政権およびその次の「第五世代」政権には強く求められよう。
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