Business & Economic Review 2007年08月号
【REPORT】
小売業における業態間格差の展望-販売形態別にみた2015年の消費市場
2007年07月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 主任研究員 枩村秀樹
要約
- 少子高齢化に伴って、消費市場に様々な変化が現れると予想されている。本稿では、総務省「全国消費実態調査」に掲載されている購入先データに着目し、販売形態からみた消費市場の変化を展望した。
- まず、購入先データをもとに高齢者の消費行動の特徴を整理すると以下の通りである。
a.高齢者(60歳以上)は、若年層(29歳以下)に比べ、一般小売店やスーパーでの購入額が多く、コンビニエンスストアやディスカウント・量販店での購入額が少ない。
b.ただし、小売業界の構造変化を受け、購入先シェアは変化している。過去10年間で、高齢者の購入先シェアは、一般小売店が低下し、ディスカウント・量販店が上昇した。 - これらを踏まえ、過去10年間の購入先シェアの変化の流れが今後も続くという前提を置いたうえで、購入先別にみた2015年の消費市場を試算してみると、結果は以下の通りである。
a.販売形態別にみると、スーパーとディスカウント・量販店の市場規模が大きく拡大すると見込まれる。シェアは小さいものの、通信販売などの市場も拡大する。
b.地域別にみると、市場拡大は大都市圏に集中すると見込まれる。ただし、スーパーやディスカウント・量販店の市場規模は、地方でも拡大する公算が大きい。 - 以上のように、今後の少子高齢化社会のなかで消費需要を捉えるためには、人口動態の変化に対応した取り組みが必要といえる。とりわけ、a.価格戦略の明確化、b.生活スタイルの重視、c.地域戦略の見直し、などにより、急拡大する高齢者市場に焦点を当てることが重要である。