Business & Economic Review 2006年03月号
【REPORT】
大競争時代の地銀のクレジットカード戦略
2006年02月25日 調査部 金融ビジネス調査グループ 研究員 藤山光雄
要約
- 地銀のクレジットカードに対する取り組みは、1980年代初め頃から本格化した。83年には、規模の 面で大手クレジットカード会社に劣る地銀が、共同事業方式でクレジットカード事業を運営すること を目的に、全国地方銀行協会を中心としたバンクカードや、第二地方銀行協会を中心としたワイドカ ードが事業を開始している。一方、カード子会社を設立し、都銀系クレジットカード会社とのフラン チャイズ方式でクレジットカード事業を進める地銀が増加したのも同時期である。もっとも、これら の地銀のクレジットカード事業は、いずれも成功しているとは言い難い。
- 現在の都市圏と地方におけるクレジットカードの利用状況には大きな差があり、地方におけるクレ ジットカード利用は都市部ほど進んでいないのが現状である。もっとも、こうした地方におけるクレ ジットカードの利用状況は、見方を変えれば地方には依然クレジットカードに対する潜在的な成長余 地があることを示しているとも考えられる。今後、クレジットカード利用の日常化や、インターネッ ト利用の拡大が、地方におけるクレジットカード利用の拡大を後押しすることになろう。
- 地方におけるクレジットカードに対する潜在的な需要の存在は、クレジットカード事業の強化を進 める地銀にとって好機であるが、同時に地方におけるクレジットカード市場での競争が激しくなるこ とが卵zされる。とりわけ、a.クレジットカード業界の再編、b.メガバンクによるクレジットカード 事業の強化、c.郵政民営化による郵便貯金銀行の誕生、は、地銀の進めるクレジットカード事業に対 して脅威となる可柏ォが高い。
- こうした脅威に対応し、地方のクレジットカードに対する需要を取り込むために、クレジットカー ド事業をリテール分野の主力事業と位置付け、本格的な業務展開を図る地銀がすでに現れ始めている。 とりわけ、銀行本体でクレジットカードを発行する地銀の増加が注目されるものの、共同事業方式の バンクカードや、各自のカード子会社を利用してクレジットカード事業の強化に取り組む地銀も存在 する。
- 地銀のクレジットカード戦略は、クレジットカードを銀行の商品のなかでどのように位置付けるか により大きく異なる。具体的には、地銀におけるクレジットカード事業の位置付けとして、a.決済手 段としてのクレジットカード、b.ファイナンス商品としてのクレジットカード、c.リレーションシッ プ穀z手段としてのクレジットカード、の三つの位置付けが考えられる。クレジットカード事業にお ける費用対効果の考え方、戦略の進め方などについて、クレジットカード事業の位置付けを明確にし たうえで、選択する必要があろう。
また、地銀がクレジットカード市場において大手クレジットカード会社やメガバンクとの競争に打 ち勝つためには、地銀の強みを活かし、クレジットカード事業における差別化を図る必要がある。と りわけ、地銀がその優位性を発揮できるのは、a.地元企業との密接な関係、b.地域における営業拠点 数、であり、それらを活かした戦略の展開が成功の鍵となろう。