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Business & Economic Review 2007年06月号

【REPORT】
わが国の教育委員会制度の課題-アメリカの事例を参考に

2007年05月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 制度・政策調査グループ 主任研究員 高坂晶子


要約

  1. 少子化が進み優れた人材の育成が求められるわが国にとって、教育は大きな問題であり、安倍晋三政権においても重要政策課題として教育再生が打ち出されている。

  2. わが国の教育制度は、戦後アメリカにならって整備されたことから、現在でも日米には共通点が多い。すなわち、州が教育を専管するアメリカでは、文部科学省に相当する州教育局が政策立案に当たり、その傘下の学区教育委員会が学校行政の実務を担当し、さらに各学校が教育サービスを提供する3層構造である。

  3. ただし、これら3層の活動実態をみると、教育委員会(以下、教委)については日米の間に相違点が看取される。具体的には、国の規制のもとで全国一律の運営を迫られるわが国の教委と異なり、アメリカでは地域住民の自己責任、自己決定に基づく学校運営が進められている。

  4. アメリカの取り組みの背景には、教委と地域社会の密接な関係がある。すなわち、まず住民が積極的にニーズを発信して教委に対応を求める一方、そうした住民ニーズに対して、教委は総じてきめ細かく対応するスタイルが定着している。

  5. アメリカの学校運営において、住民がニーズを発信した後のプロセスをみると、a.まず、教育委員によって、住民ニーズを踏まえた方針が策定される。b.次いで、教委の活動や成果について情報が開示される。c.さらに、教委のパフォーマンスに関する住民の判断に基づき、改善が進められる、と整理される。

  6. 翻ってわが国の教委制度をみると、アメリカと比べて、住民ニーズにきめ細かく対応するスタイルが一般化されていない。今後、わが国において、地域住民の建設的なニーズを学校運営に反映させ、教育の質の向上を図るためには、全国一律の国の規定を見直し、学校を運営する仕組みを地域社会ごとに柔軟に構築、運営していくことが必要といえよう。
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