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Business & Economic Review 2007年04月号

【REPORT】
中小企業向けビジネス支援サービスの強化について
-アメリカ公共図書館の事例を参考に-

2007年03月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 制度・政策調査グループ 主任研究員 高坂晶子


要約

  1. 安倍晋三政権の下で成長戦略が打ち出されるなか、わが国の中小企業では、過去20年にわたって廃業数が開業数を上回っており、今後の経済成長に対する懸念要因といえる。このため、起業や事業育成に取り組む人々への支援サービス(以下、ビジネス支援)の強化が重要政策課題の一つとなっている。

  2. こうした観点から、起業や事業育成が活発なアメリカの状況をみると、中小企業や起業家予備軍に対して身近な組織がサービスを提供し、ビジネスを円滑に進めることができるよう支援する体制が全国的に整備されている。とりわけ、a.サービスを行う組織の絶対数が多いうえ、経済中心地から離れた地方にも立地している、b.中小企業の求めるサービスが手軽かつ包括的に随時提供されるという2
    点が特徴的である。

  3. 多くの支援組織が配置されているなかで最も数が多いのは1万7,000カ所存在する公共図書館であり、ほぼ全米をカバーし、ビジネス支援の基盤的インフラとなっている。公共図書館は、中小企業の問い合わせに応じて資料等を提供するだけではなく、企業のニーズを先取りして、実際に役立つ情報を提供し、活用方法についても助言を行う。具体的には、営業免許の取得要件や租税優遇措置等の実務情報、あるいは地域再開発計画に盛り込まれた、中小企業を優遇するコミュニティ・ビジネス支援プランに関する情報の提供、助成機関やビジネス・カウンセラー等の紹介、斡旋などである。さらに中小企業が人脈の拡大や販売先の開拓を図るための各種の会合や、会計・法律等の専門知識に関する講座等を公共図書館が開催するケースもある。

  4. こうしたアメリカの状況と対比してみると、わが国の場合、都市と地方を問わず、中小企業や起業家予備軍が、包括的なビジネス支援サービスを身近に受けることのできる仕組みが十分整備されているとは言い難い。今後実効性の高いビジネス支援体制を整備することで、地域経済の振興と地方の自立を達成するだけでなく、わが国全体の成長戦略に寄与することが期待される。
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