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リサーチ・フォーカス No.2021-019

コロナ禍で中小企業の財務状況はどう変化したか~ 事業環境の正常化が過剰債務問題の最良の処方箋に ~

2021年07月15日 谷口栄治


2020年度の中小企業の業績は、経常利益が前年比▲24%減と大・中堅企業対比、大幅な減益。業種別にみれば、宿泊・飲食、生活関連・娯楽といった対人関連サービス業で、前年比約3~5割の減収となっているほか、経常赤字に陥るなど、コロナ禍の影響は甚大。
中小企業の減益幅が大きくなった要因のひとつとして収益構造の違いが存在。中小企業は人件費や減価償却費等の固定費の割合が高く、売上高急減時にコスト削減による収益改善が図りにくい構造。

バランスシートをみれば、実質無利子・無担保融資をはじめとする資金繰り支援策により、銀行の中小企業向け貸出残高は、前年比+5%程度の水準で高止まり。一方、保守的に手許資金を積み増したことで、有利子負債から現預金を差し引いたネット有利子負債は減少。
債務負担を測る指標である債務残高月商比や債務償還期間は、いずれも長期化しているものの、要因をみれば、売上高やキャッシュフローの減少による影響が大きくなっている状況。
経済活動の回復を受けて、中小企業の資金繰りは、全体として改善傾向にあるものの、対人サービス関連業では、資金繰り判断指数がマイナス圏内にあるなど、依然として回復に遅れ。

中小企業の再生・再建に向けては、感染拡大により悪影響を受けた事業環境を早期に正常化させるとともに、コロナ後の構造的な変化への対応力を強化していくための政策支援が必要に。
「事業環境の早期正常化」については、①ワクチン接種の迅速化や医療体制の整備、②これまでの感染予防策に関する効果検証や不必要な対策抑制、③感染収束後の飲食や観光等の需要喚起、が必要。
「構造変化への対応力強化」については、①新ビジネス展開や業態・業種の転換、事業再編等の推進、②コスト改造改革を目的としたデジタル化支援等、「攻め」と「守り」の両面からの政策サポートが求められる。金融機関としては、従来の資金繰り支援に加えて、本業の支援を通じて、顧客の収益力や債務返済能力の向上に貢献していく必要あり。


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