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リサーチ・レポート No.2020-002

マンションはこれからも維持できるのかー人口減少時代にふさわしい供給・維持・解体のルール構築を

2020年05月01日 立岡健二郎


わが国は今後さらなる人口減少に直面し、空き家問題が深刻化していく。それに伴い、行政が強制解体に踏み切る事態が増えた場合、本来、住宅の所有者が負担すべき費用を社会全体で負担することになる。こうしたリスクに対応するためには、住宅の維持・解体に関して一定のルールを設ける必要がある。本稿では、最も大きな問題を抱えるマンションに焦点を絞り、人口減少時代の維持・解体のルールの在り方を検討する。

マンションは、通常、すべての区分所有者をメンバーとする管理組合が総会での決議等に基づき、自主的な管理運営を行っている。各区分所有者は、毎月、管理運営のため、管理費のほか、劣化した建物・設備等を修繕するための積立金を負担している。

マンションに関する法制度は、1962 年施行の区分所有法が基盤となっている。同法は、区分所有建物の権利関係を明確化したほか、管理運営における自治を広く認めた。その後も、管理運営の向上や、建て替え等にかかる要件の緩和や手法の多様化を図るため、同法の改正や追加立法等が進められてきた。

現在、マンションは「建物の高経年化」と「所有者の高齢化」という“2つの老い”に直面し、管理不全・廃墟化のリスクが高まっている。このため、国は、管理運営面での行政の役割強化や、敷地売却制度の要件緩和、敷地分割制度の創設などの法改正を進めている。自治体のなかにも、国に先駆けて届出制度や情報開示制度を設けるなど、独自の取り組みを進めるところがある。

こうした取り組みは評価できるものの、今後の人口減少社会を見据えると、さらに踏み込んだ対応が必要である。全国のマンションの6~7割が立地する都市部でも急速な人口減少が進むため、このままでは、行政が管理不全・廃墟化マンションの強制解体に踏み切らざるを得ない事態が多発しかねない。

こうした状況を念頭に置くと、現行のマンション関連の法制度で問題になるのは、区分所有権や私的自治等の“権利”が認められる一方で、本来はそれと表裏一体であるべき、維持管理・解体等に関する当事者の社会的な“責任”や“義務”に関す
る規定が欠落している点である。今後、国や地方自治体は、①マンション関連法に、当事者による適正な管理等に関する義務や責任を明記する、②届出・情報開示制度を整備し、マンション管理の現状をしっかり把握する、③維持管理・解体の義務に関する詳細を固める、④マンション再生に地方自治体がより積極的に関与する枠組みを整える、⑤管理・再生の手法を現実に即して柔軟化・多様化する、ことが求められる。

併せて、マンションを含む住宅の供給の在り方について議論を深めることも重要である。住宅ストックの総量に目安・目標を設けたり、開発規制を導入したりして、新規供給を抑制していくことも必要になろう。

・マンションはこれからも維持できるのかー人口減少時代にふさわしい供給・維持・解体のルール構築を(PDF:870KB)
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