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中国の台頭と日本が見いだすべき強み

2019年06月11日 七澤安希子


 私自身、長らくASEAN諸国と関わってきたが、近年は、日に日に、中国という国の存在感の高まりを感じるようになった。ASEAN最大の親日国であるタイでさえ、日本からの直接投資額が半減(前年比)する一方で、中国の額は倍増している。この他、高速鉄道等の大型インフラ案件で日本と中国が競合するケースがあちこちで増えてきている。資金力に加え、技術力でも中国のプレゼンスは高まりつつある。
昨秋、日本政府は「日中第三国投資」という、ASEAN市場において中国と協働する戦略を打ち出した。日本の相対的な強みを冷静に見極めていくことが必要となっている。

 昨年末から中国へ往訪する機会も増えた。そこでは、中国を通じて日本の見え方を知ることがあった。中国といえば、安価な人材が集まる世界の工場というイメージがあった。しかし、それも今や昔、ここ2~3年では特許出願数や科学技術分野の論文数、被引用数等で日本を追い抜き、科学技術立国というポジションを確保しつつある。当然そのような事実は耳にはしてはいたものの、「ビジネスの世界ではまだ日本の技術が求められているに違いない」という淡い期待があった。
 ある時、スマートシティ開発を志向する中国の地方政府と、交通や上下水道、廃棄物等の社会インフラ分野における日本との連携可能性について議論した際に、政府関係者から明確に耳にしたのが、「日本には技術ではなく理念やサービスノウハウに期待したい。技術なら中国にある。技術での連携はセンシティブな問題であり難しいだろう」という発言であった。中国の他の地方政府からも同様の発言があった。技術ではなく、どのように人々の民度を高めたのか、どのように成熟した社会システムを構築し、根付かせたのか、日本の事例や経験値から学び、日本のような社会システムを構築したいという憧れを、感じることになったのである。

 産業革命を主導した欧州は、のちに米国や日本の台頭の中、世界での相対的なプレゼンスを低下させた。時代は変わり、経済大国として繁栄を続けてきた日本は、今、中国をはじめとした世界の台頭の中で、相対的なプレゼンスを低下させているのは紛れもない現実となりつつある。産業革命以降の欧州は、いかに世界の中でその存在感を保ち続けたのか。そこに日本は学ぶ必要があるだろう。
 欧州は、自らの成熟したサステナブルなライフスタイルを基に、環境問題という新たな社会問題・価値観を提示し、世界全体の枠組みをリードする体制を構築した。近年ではSDGsという新たな価値基準を創出し、今もなおリーダーシップを発揮し続けている。
 日本には、中国をはじめ、世界が認める成熟した社会システムがある。この成熟した社会システムを基に、一企業だけでもなく、政府・行政だけでもなく、官民が一体となって世界の規範を構築し、市場を創造し、世界をリードしていくことを目指すべきではないだろうか。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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