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【ヘルスケア】
Shift↑リビングラボ(仮称)活動報告 「ともに食事」編

2019年05月14日 岡元真希子


 日本総研では、(株)ダスキンが運営する「わこう暮らしの生き活きサービスプラザ」(以下、プラザ)や、ハウス食品グループ本社(株)が八千代市社会福祉協議会と連携して運営する「八千代リビングラボ」において、「Shift↑リビングラボ」の手法開発を行ってきました。「Shift↑リビングラボ」の特徴は、新しい商品や社会課題の解決策を生み出すだけでなく、活動に参加するシニアが「自分を再発見する、ワクワクがよみがえる」ことを目指す点です。
 これまでのメールマガジンで、「暮らし方・住まい方」「はたらくこと」編をご紹介しましたが、今回は「ともに食事」をテーマに開催した回についてご報告をしたいと思います。

 「ともに食事」をテーマにした理由は、人とともに食事をする機会がある人、心配事や愚痴を話せる相手がいる人は、「幸福度」が高いという調査結果があるためです。シニアを対象に、幸福度を尋ねると、健康状態が良好な人は高く、健康状態が悪い人は低くなります。しかし、健康状態が良好でも、いつも一人で食事をしている人や話し相手のいない人は幸福度が低く、逆に病気があっても、人とともに食事をする機会があって話し相手のいる人は幸福度が高いという傾向があります。

 そこで、シニアがどんな場面で人と一緒に食事をしているのか、そしてどんな話題が上がっているのかをできるだけリアルに実態把握するため、リビングラボで調査してみることにしました。実際には、参加するシニアに事前にお話をして、食事風景の写真を見せていただきながらお話をしていただく形態をとりました。
 参加してくださったのは女性14人、男性10人の計24人で、うち70代の方が13人でした。夫婦世帯の方が15人、一人暮らしの方が6人でした。人との食事であれば、自宅でも外食でも構わないという条件でお話をいただいたところ、3つのタイプがありました。

 一つめは普段の自宅でのご夫婦二人の食事という類型です。「夫とテレビを見ながら食事する。テレビを見ているのであまり会話はしないが、スポーツが好きなので相撲の話や大坂なおみ選手の話などはする」「食事中、夫は話をあまり聞いていないが、一方的に私が話をしている」など、会話はさほどせずに食事をしている姿が目に浮かびます。「一日三食、私(妻)が作る」「固いと文句を言われるので気を遣う」「夫は濃い味付けが好き」「夫は酒の肴が並んでいないと不満」など、夫の希望に応えて食事の支度をしているという妻としての自負も垣間見られました。

 次は子ども家族との食事です。夫婦世帯のシニアで、別居の子ども家族との食事を話題にした方が多くおられました。「料理はたくさん作ると作り甲斐があるので息子家族を呼ぶ」「鍋も多いが、ホットプレートで焼肉、手巻き寿司」など、大勢で囲むと楽しい食事の場面が浮かびます。また、子ども家族の家に行くときには、「寿司やオードブルを注文して、サラダだけ作る」「お嫁さんは普段働いているので何もさせないようにする」など、子ども家族への気遣いも感じられました。小さいお孫さんがいると、お孫さんの成長が話題に上ることが多いようです。また、「ひとりだと焼肉を食べられないので、娘家族と外食するときは焼肉。自分が払う」「娘と買い物に行き、コートを買ってあげた。ステーキ200gを食べたあと喫茶店でおしゃべりした」「神社に娘とお参りに行った帰りにうなぎ屋に行った。うなぎ屋には娘とよく行く」など、娘さんと一緒にちょっと贅沢をしている姿も浮かびました。

 最後は、友人・知人との会食です。「習い事のあと、教室の仲間10人と居酒屋でランチをする。ランチのあとに自主練をして、そのあとコーヒーを飲む」「体操教室の後は必ず仲間と食事に行く」「防災ボランティアの集会で出会った仲間と、反省会を兼ねて、カラオケと飲み会をしている」など、サークル活動や地域活動の仲間との食事会が話題に上がりました。旧友を大切にして「昔の勤め先の同僚数人と年に数回飲み会をしている。知り合いが今どうしているか、などの話をする」という人もいましたが、幹事役の方がまめであることが継続の秘訣のようです。
 一対一の食事としては「飼い犬を通じて知り合った若い友人とイタリア料理店でパスタを食べた。犬が入店可のお店で、お互い犬を連れてきた。彼女の不妊治療について話を聞いてあげた」「中学生の頃からの友達と観劇に行って、その時にランチした。自分はお肉も入っているサラダのランチだった。観劇に行くときはおしゃれなお店を探していく」など、親密な食事の様子がうかがわれました。

 一つめの夫婦の日常の食事の類型については、どちらかが先立つと、独居になり一人で食事をすることになります。二つめの類型については、親族が近くに住んでいれば、実現が可能ですが、離れて住んでいる場合や親族が少ない人の場合には難しいかもしれません。そういう意味では、最後の「友人との食事」の類型は世帯の条件を問わず開かれている機会といえるかもしれません。なかでも、趣味や地域活動で定期的に顔を合わせる仲間をつくり、会合のついでにグループで食事をするというのが、比較的、実現容易な方法と言えます。

 今回のリビングラボでは、写真を用いることで、食事をした時の記憶が呼び起こされ、「あの時食べたあれはおいしかった」「あの時はこういう話をした」など、楽しそうにお話をしてくださった方が多かったように感じました。進行役が細かく質問してしまうと答えるシニアが疲れてしまうこともありますが、今回は写真をきっかけに自然な流れで会話が展開しました。
 これからも「Shift↑リビングラボ(仮称)」を通じて、話をすること、自分の意見を言うことが楽しいと感じていただく機会を提供していきたいと思います。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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