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アジア諸国と日本の教育政策の本質的な違い

2017年11月28日 井熊均


 毎月のように中国関係の仕事に関わっていると、驚異的な速さでアメリカに次ぐ経済大国となり、近い将来、アメリカに肉薄するであろう中国の勢いの源泉が教育基盤にあることが分かります。北京大学、清華大学は既に世界で日本の大学をしのぐ評価を得る地位を獲得し、両校に次ぐレベルの学校がいくつも控えています。各省には地域の行政・経済を支える人材を輩出する地域の中核大学があります。こうした大学界の構造が、中央においては先進国と競い得る経済政策を講じ、地域においては中央の政策と連携して振興を図ることを可能としているのです。また、大学の下には、小中学校、高校を経て優秀な人材が選抜される仕組みがあります。

 シンガポールが独立した時、リークアンユー氏は、「われわれにあるのは、戦略的な立地条件と立地条件を生かすことのできる国民だけだ」と語ったとされます。以降、シンガポールは氏の指摘どおり国民の教育に力を入れ、同国の大学がアジアで最高の評価を受けるまでになりました。
 有力大学を頂点とした教育システムには過度の受験競争などの弊害もあります。しかし、日本の教育政策が迷走している間に、アジア諸国が教育と経済政策に力を入れ、中国は経済規模で、シンガポールは一人当たりGDPで日本を追い越し、その差を広げ続けていることは確かです。

 ここのところ日本では教育無償化の議論が盛んです。経済的な格差が教育機会の不平等を生む状況を解消することが大事であることは間違いありません。しかし、日本でもかつて米百俵の話があったように、教育とは人づくりであると同時に、国づくりでなくてはなりません。そのことを見失い、無償化だけが独り歩きするのであれば、日本は国の成長という教育投資の回収原資を失うことになるのです。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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