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【次世代農業】
次世代農業の“芽” 第4回 質・量ともに改善する飲食料品輸出

2017年10月10日 菊地秀朗


 今回の次世代農業コラムでは、わが国農水産品・飲食料品の競争力の現状を掴むため、マクロ経済データ、具体的には貿易統計を使って、輸出の動向を確認してみます。

 わが国飲食料品の輸出金額(=輸出数量×輸出価格)は、リーマン・ショック前後から伸び悩みましたが、アベノミクス始動により円安が大幅に進行した2013年以降は大きく改善しています(図表1)。数量が大きく伸びたほか、価格も円安によるかさ上げを除いたベースで持ち直しています。

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 全体でみれば、アジア、米欧でわが国飲食料品への引き合いが増すなか、価格の上昇と数量の増加が同時に生じており、好ましい状況にあるようにみえます。もっとも、品目別にみると、改善の状況は一様ではありません。図表2は、為替変動を調整したうえで、品目別に2016年の輸出金額、数量、価格を2012年と比較したものです。

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 タイプ分けすると、まず、黄色(単色)でシャドーをかけた品目は、円安下でも販売価格をほとんど下げずに輸出数量の増加を実現しています。具体的には、肉類、軟体・無脊椎水棲動物性生産品(イカ・たこ・貝類・なまこなど)、ぶどう、菓子類、穀物・ミルク等調製品(乳児用食品やインスタントラーメンなど)が挙げられます。

 こうした品目では、世界的に和食人気が高まるなか、ブランド戦略が奏功し、価格を下げずとも販売量を増やすことが出来ているものが多いと考えられます。たとえば、世界的に「和牛」ブランドの認知度が高まっている牛肉があります。高価格帯のみならず、中価格帯の商品の輸出も増加していることから、統計上は価格が抑えられている面もありますが、それでも単価をほとんど下げずに輸出数量を増加させています。ぶどうは、「シャインマスカット」や「ピオーネ」などの高級ブランド育成の成功や、輸送技術の向上が寄与している模様です。

 菓子類の増加には、訪日外国人観光客がわが国製品の品質に満足し、帰国後に買い求める「リピーター需要」の拡大が寄与しているとみられます。香港・中国・韓国などでの食の安全への関心の高まりも、乳児用食品を中心に、わが国調製食料品への需要を高めています。

 次に、ピンク色(網掛け)でシャドーをかけた品目は、円安を活かし、販売価格を引き下げながら、輸出数量を大きく伸ばしたものです。具体的には、鶏卵、ながいも、いちご・りんご・桃、各種調製品、飲料・アルコールなどが挙げられます。

 これらの品目でも、和食人気・健康志向・ブランド認知度の高まりや、輸送技術の向上など、輸出条件の改善が輸出数量の増加に寄与していますが、事業者は必ずしも価格維持による利益率改善を目指さず、シェアの拡大、認知度の上昇に注力している模様です。

 最後に、上記2タイプに分類されない品目として、輸出数量は伸びていないものの高価格ブランドが堅調なコメ、漁獲量が減少したマグロ類、旱魃で米国産が減少し韓国・台湾向けが急増したたまねぎ、などがあります。

 わが国マクロ経済全体を見渡してみると、製造業の生産拠点の海外移転などが進み、円安による輸出数量の増加は、従来ほど期待できなくなっています。こうした状況下、農水産品・飲食料品は、数少ない輸出増加余地の大きい品目といえます。

 事業者からみても、国内市場が飽和するなか、輸出は成長余地の大きいセクターであり、海外市場を取り込むことができれば、産出量が増えても価格を下げずに利益率を改善することが可能になります。

 わが国農水産品・飲食料品の評価は高く、輸出戦略も一定程度奏功している状況です。今後も、アジアの所得拡大や自由貿易協定の推進などに伴い、輸出を取り巻く環境は改善が見込まれます。引き続き、ブランド戦略や高付加価値化に取り組み、価格を維持しながら数量を増加させられる、牛肉やぶどうに続く輸出品目を育成していくことが期待されます。とりわけ、コメに関しては、減反政策による生産調整の終了に伴い、海外需要の取り込みが極めて重要となりましょう。


この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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