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新興国「再エネ」市場開拓は日本市場の「火力」が強みに

2017年05月01日 瀧口信一郎


FIT後のエネルギーシステム
 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の見直しを受け、日本の再エネは転換期を迎えている。開発縮小が見込まれるメガソーラーに続く再エネ投資対象、FIT買取価格、FIT終了後の再エネ事業の転換について議論が続く。現状では、再エネをどこまでも拡大すべきとするか、それに反発するかの立場の違いで議論している印象がある。
 しかし、本来必要なのは再エネ推進の良し悪しではなく、永続的なエネルギーシステムの冷静な議論である。すなわち、世界のエネルギーシステムの潮流と親和性はあるのか、世界の市場で日本メーカーやエネルギー会社がどう勝負するか、そのためにどのような日本市場を作るのかという視点が大切となる。なぜなら、エネルギー市場を支えていくエネルギー会社やメーカーにそれなりの競争力がなければ、エネルギー市場そのものを発展させられないからである。

三大市場で主流となるウィンド&ファイアー
 今後、世界の電力三大市場である米国、EU、中国では風力発電が急伸し、2030年までには、水力、石炭火力、天然ガス火力、原子力と同様に中核電源の一角を占めるようになるだろう。風況の良いエリアでの発電コストが10円/kWhを切り、他の発電に比べて経済合理性が高くなった風力発電は、広大な陸地と偏西風を中心とした良好な風況を備える三大市場では、大量導入が可能だからである。
 もっとも風力発電は、総発電量に占める割合が20~30%程度で頭打ちとなる。風況次第で発電量が大きく左右されるため、他の発電での補完が必要となるからである。デンマークが50%近い発電量を実現しているのは、周辺国による変動調整のおかげであり、日本の参考とはなりにくい。また、欧州の容量クレジットの研究によると、ピーク電力の100%を風力発電だけで賄うとした場合、火力発電と同じ信頼性を確保できる発電規模はその5~10%程度に限られる。
 そのため風力発電が中核電源になっても、火力発電は風力の変動を調整する発電として不可欠であり、固定費負担を賄うため容量市場などを通じて保護されることになる。つまり今後の三大市場は、多かれ少なかれウィンド&ファイアー(風力&火力)の特徴を持つことになる。

ガラパゴス化に見えて実は主流となる日本市場
 日本でも風力発電は拡大するが、三大市場ほどウィンドは中心とはなり得ない。国土が狭く風況条件の良い地域も少ない日本では、風力発電の適地が北海道の北部や東部、九州など一部に限られるからである。人口減少の中、風力発電に必要な送電投資への意欲も弱い。
 そこで、日本は今後ファイアー側、つまり石炭火力、天然ガス火力に注力すべきである。火力資産を受け継ぎつつ、化石燃料とバイオマスを混焼させる「バイオマス火力」の導入を拡大していくことで、バイオマス燃料への円滑な移行の道も開けると考えられるからである。バイオマス燃料は少量多品種で効率が悪いが、日本の意識の高い企業や住民による分別の徹底や安定的な物流網が確立している廃棄物処理インフラを活用することで、効率的にバイオマスを回収する工夫の仕方もある。将来的には早生樹や藻など「育てるバイオマス燃料」への道も開ける。また、タービン・エンジン分野の人材、そして重機械工業や自動車産業の裾野で機械部品を手掛ける部品メーカーが豊富であることも、バイオマス火力の発展を支える基盤となるはずである。
 一方で三大市場と比較すると、縮小する日本の電力・再エネ市場は2030年に向けて存在感が薄い。日本企業は海外市場と国内市場を一体で捉えなければ商売にならない。今後の三大市場で風力発電が伸びると想定すると、ガラパゴス化とも取れる日本市場では海外市場を取り込むことが困難で将来性がないようにも見える。
 しかし、三大市場以外には東南アジア、中南米、東欧など、日本と同様に風況の良くない地域は数多く存在する。これまでコストの高い再エネは三大市場を中心に展開されたため、日本市場が特殊に見えるだけなのであり、新興国の市場では、日本型の電力市場はガラパゴスどころか、むしろ主流として各国と一体的に成長していく可能性すらある。
 世界で商機を見いだせる火力を中心とした市場を目指すことで、今後の日本の電力市場の設計は明確になる。今後日本型電力市場の形成に向けて政策を組み立てていくことが大切である。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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