コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

CSRを巡る動き:企業が本業で森林保全・カーボン吸収に貢献する道筋

2016年12月01日 ESGリサーチセンター


 気候変動に関する国際交渉は、2016年10月時点でパリ協定が発効し、第22回気候変動枠組条約締約国会議(COP22)マラケシュ会議は同時にパリ協定の第1回締約国会議と位置づけられることになりました。パリ協定は、今世紀後半に温室効果ガスの排出と、森林や海によるCO2吸収量を均衡させること等を求めており、今後、詳細ルールの検討に入っていきます。

 森林等によるCO2吸収については、パリ協定第5条に、各国が保全と強化のための措置を講じることが盛り込まれています。森林対策に関する国際的なメカニズムの1つが、「REDD+(レッドプラス、Reducing emissions from deforestation and forest degradation)」です。REDD+とは、森林保全活動を行う方が伐採するよりも「得」になるように、CO2の吸収効果等を評価し経済的支援をすることを通じ、途上国における森林保全を推進しようという国際的な仕組みです。日本では民間企業によるREDD+を通じた技術やサービスの展開の後押しを、国が始めたばかりの段階でもあるため、まだあまり具体的な事例が知られているとは言えません。

 さらに、森林の保全に対して企業活動を通じてどのように貢献し得るかという点については、省エネや再エネなどのテーマと比べてほとんど議論が深まっていません。工場等立地地域の森林保全は、企業の社会貢献活動の定番になっています。また、一部の企業では大規模社有林でのCO2吸収効果等を算定していますし、森林によるカーボンオフセットを行う企業もあります。また、森林利用に関する情報開示を企業に促す「CDP森」の2015年調査では、全世界の回答企業181社のうち26社(約14%)を日本企業が占めており、森林に対する企業の関心がないわけではありません。それでも、木材の持続可能な調達等、サプライチェーン上のリスクなどの観点からの捉え方がほとんどで、森林の喪失や劣化を防ぐ製品・サービスという視点はこれからのようです。

 このように、企業の本業からはやや縁遠い森林のCO2吸収について、市場開拓を狙った資金調達をIFC(国際金融公社)が行う予定です。投資家は、IFCが発行する債券の利息の受け取りを、現金またはカーボンクレジットのどちらかまたはその組み合わせで受け取ることができる点が特徴になっています(元本の資金使途は限定なし)。カーボンクレジットが創出されるのは、ケニア東部の大規模REDD+事業で、今後30年に亘り毎年140万t-CO2の温室効果ガスをオフセット(相殺)する規模を有しています。投資家はIFCの債券購入を通じてREDD+事業に関与することができ、カーボンクレジットをブローカーから購入するよりも簡単であると言えます。もし、投資家がカーボンクレジットよりも現金受け取りを希望した場合には、鉱業大手のBHPビリトン社がクレジットを購入する約束になっており、全体の仕組みを補完しています。企業も、場合によってはこのような債券投資を通じてREDD+に関する詳しい情報を得られる可能性もあるでしょう。

 森林の喪失や劣化によるCO2濃度抑制への悪影響は、全世界の排出量の15%に上るとも言われ、その保全対策の巧拙は、水資源や生物多様性、地域コミュニティの生活にも大きな影響を及ぼします。日本企業がどのように貢献していくのか、今後の動向に期待が集まります。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ